血液による新しいガン検査

血液検査でガンを発見しようとする方法は、従来、腫瘍マーカーを測定する方法がとられています。CEA、CA19-9,などがそれにあたります。

これらの腫瘍マーカーは、癌細胞が死んで分解されるときに出るタンパク質で、すでに40種類以上のマーカーが知られています。しかしこれらは、ガンが小さい間はキャッチできず、ある程度癌が発育してからでないと発見できない弱点がありました。

このたび、国立がん研究センター、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、東レなどのグループが、僅かな血液で13種類のガンを早期に発見する方法を開発し、注目を集めています。

話題の物質 ”マイクロRNA”

話題の物質とは、血液中の「マイクロRNA」と呼ばれる微小物質です。

ガン細胞は大きくなるために、さかんに栄養を取り込む血管をつくっていますが、このとき分泌される物質がマイクロRNAです。

そもそもRNA(リボ核酸)とは、遺伝子情報の書き込まれたDNA(デオキシリボ核酸)の情報をもとに、新しい細胞を作る働きをしています。

また、マイクロRNAとは、DNAから写し取られた遺伝子のかけらのように小さなものですが、他の遺伝子の働きを調節しています。

ガンに特有のマイクロRNAがある

ひとではマイクロRNAは2588種類みつかっていますが、このうち500種類が脂質の袋に包まれた状態で血液中を流れています。ガン細胞にもそれ特有のマイクロRNAがあって、ガンの増殖や転移に深く関与しており、人間に備わる免疫細胞からガン細胞を守る働きも果たしています。

ガン細胞と正常細胞とでは、マイクロRNAの種類が異なっており、ガンが発生すると、ガンの種類によって細胞から分泌されるマイクロRNAの種類や量が変化することが分かってきました。さらにガンの増殖や転移がおきると、その種類や量が変動するため、非常に有力なガン検査の指標になることが分かってきたのです。

しかも、マイクロRNAはガンの発生と同時に血液中に分泌され始めるため、早期発見にきわめて役に立つと思われます。

具体的には、患者さんの血液中のマイクロRNAを取り出し、これをチップ(基盤)にふりかけて試薬と反応させ、これに反応したマイクロRNAを検査機器で解析し、ガンに対する免疫反応を反映しているマイクロRNAを探すのです。

13種類のガンの診断に有用

国立がん研究センターや東レなどは、ガン患者さんたち4万人の保存した血液から、食道ガン、胃ガン、大腸ガン、膵がん、肝ガン、胆道ガン、肺ガン、乳ガン、前立腺ガン、膀胱ガン、卵巣ガン、肉腫、脳腫瘍(神経膠腫)など、13種類のガンに特有のマイクロRNAを特定しました。血液1滴でこれらのガンを95%以上の確率で診断できたといいます。ちなみに乳ガンは97%でした。

ただ、保存した血液ではマイクロRNAが変質している可能性もあります。今後はガン患者さんや健康な人約3000人から新鮮な血液を提供してもらい、臨床研究を始める予定です。そしてできれば3年後をめどに、事業化をめざすということです。

マイクロRNAの問題点

マイクロRNAが非常に優れた検査法であることには、疑問の余地がありませんが、今後いくつか問題点も指摘されています。

まず、ガンでないにもかかわらず、ガンと判定されることはないかという検証が必要です。いたずらに患者さんをノイローゼに陥らせる危険があるからです。

また非常に初期のガンの場合には、マイクロRNAでガンと診断しても、現在の検査法ではガンが小さすぎて発見できない可能性もあります。その場合、どういう指導をしていくかという方針を立てておかねばなりません。

これらの疑問は鋭意解決する努力が必要ですが、マイクロRNAによるガン検診のメリットはきわめて大きいと考えられ、早期の実用化が期待されます。