腸内細菌

森

共生

森には小さな鳥や動物が数多く棲んでいます。彼らにとって森は自分たちの住居であり、木の実や花の蜜は森から与えられた食糧です。

一方森にとっては、動物たちに害虫から身を守ってもらい、花粉を運んでもらいながら、互いに助け合って生きています。こういう関係を共生といいます。

私達のからだと腸のなかに棲む細菌(腸内細菌)の関係もこれと同様で、腸内細菌は私たちが摂った食物の栄養を吸収しながら、一方で侵入した病原菌の増殖を防ぎ、感染から私たちのからだを守っています。

小腸に棲むわずかな細菌

8メートルある腸のなかでも、小腸にいる細菌は多くありません。これは胃液や小腸内の胆汁(胆汁酸)が細菌の細胞膜を溶かすため、細菌は繁殖しにくいのです。

ところが胆汁酸のほとんどは、小腸のなかを通りぬけるまでにもう一度再吸収されるため、細菌は大腸までたどり着いてやっと繁殖できる状況になります。

また、小腸に入ってきた細菌は、呼吸によって腸の中の酸素を使ってしまうため、小腸の奥へ行くにしたがって酸素不足になります。

爆発的に増殖する大腸内の細菌

したがって大腸では酸素を必要とせず発酵でエネルギーを得る細菌(嫌気性菌という)しかいなくなりますが、大腸内で爆発的に増殖するため、腸内細菌は100種類以上、100兆個という想像を絶する数になります。

腸内細菌はからだに健康的な善玉菌と有害な悪玉菌、その中間の日和見菌に分けられます。

善玉菌

善玉菌にはビフィズス菌や乳酸桿菌、悪玉菌には悪臭のもととなる腐敗物質を産生するウェルシュ菌やブドウ球菌、有毒な大腸菌などがあり、食物や体調によって善玉・悪玉どちらにでも傾く日和見菌には、バクテロイデスや毒性の低い大腸菌がいます。

大多数を占める善玉菌は腸の粘膜表面にびっしりくっついて、病原菌が粘膜内に入りこむのを防ぎ、これを排除します。

また消化酵素とともに食物を細かく分解し、消化、吸収を手助けします。

さらに全免疫システムの7割が集中している腸のなかで、免疫細胞が腸内に入ってきたものの無害、有害を判断し、無害なものは受け入れ、有害なものを攻撃するのを手伝います。

悪玉菌と日和見菌

一方、悪玉菌は摂取した食物を腐敗させ、毒素のある有害物質や発ガン物資を作り出します。

また日和見菌は、病原菌の感染を防ぎ、ビタミンを合成するという働きをする反面、腸内食物の腐敗、発ガン物質の産生などにも加担します。

腸内細菌は腸のなかに善玉9割、悪玉1割の割合で規則性をもって棲息するのが、からだにとって都合がいいようなのです。

ところが過労やストレス、不眠、抗生物質の服用等などがあれば、善玉菌が減り悪玉菌が増えて、腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。

すると腸内の免疫細胞が有害な細菌や物質を認知できないばかりか、有害か無害かも判断できず、誤って無害なものを攻撃してしまう事態に至ります。

このため腸内細菌は、潰瘍性大腸炎や大腸ガンの発生に深く関与していると考えられているのです。