多剤耐性菌

感染
様々な抗生物質に攻撃された細菌が、生き残りを図って、自らの遺伝子を変異させた結果、ほとんどの抗生物質に耐えうる能力を身につけた細菌のことです。

ほとんどの抗生物質が効かない細菌というと、いかにも強力な細菌というイメージが湧きますが、じつは菌自身はさほど強力ではなく、人へ感染する力や発病させる力は一般の細菌とほとんど差がありません。

このため健康なひとであれば、多剤耐性菌がからだに入ったとしても感染する可能性はほとんどなく、症状がでることはありません。

問題は、抵抗力のない高齢者や術後の患者さんが感染したときです。

この場合は患者さんの体力がないため、いくら弱い菌とはいっても抗生物質が効きにくいため、治療が長引き、肺炎や敗血症などをひきおこす危険があるのです。

多剤耐性菌はインフルエンザのような爆発的な流行を起こすことはありませんが、いったん耐性菌が発生すると、まわりに少しずつ着実に広がっていきます。

様々な耐性菌

代表的なものとしてはペニシリン耐性肺炎球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、薬剤耐性緑膿菌などがありますが、最近これらに加えて、多剤耐性アシネトバクターやNDM-1(ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ)産生多剤耐性菌が話題になっています。

多剤耐性アシネトバクターは2010年、帝京大学病院で体力のない53人に感染し、31人の死亡者を出す事態となりました。

健康な人であれば感染しても発病することはありませんが、免疫力が低下した人たちがつぎつぎに感染し、発病してしまったのです。

また2010年、我が国で初めて、NDM-1という遺伝子をもつ大腸菌がインドから帰国した日本人に確認されました。

NDM-1産生多剤耐性菌はカルバペネム(多剤耐性菌の切り札的抗生物質)を分解する酵素を産出するため、ほとんどの抗生物質が効きません。

幸い治癒することができましたが、この菌は健康なひとにも感染する可能性があり、病院外にも感染の広がる危険があります。

多剤耐性菌の感染経路については、手などについた細菌が、何かのきっかけで口から入って感染します。

したがって、患者さんに接触した後やトイレを使用した後は、きちんと手洗いすることが大事です。 アルコール系などの一般的な消毒薬で大丈夫です。