21.老化にブレーキをかける“NMN” (ニコチンアミド・モノヌクレオチド)

Old, Man

老化を遅らせるサーチュイン遺伝子

サーチュイン遺伝子(silent information regulator gene)とは老化を遅らせる働きをもつとされるタンパク質です。1999年、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授により、発見されました。

最初、イースト菌から発見され、「Sir2」と呼ばれました。その後さまざまな生物にあることが分かり、マウス(実験動物)では「Sirt1」、ヒトでは「SIRT1」と呼ばれることになりました。

サーチュイン遺伝子はそのままでは働きませんが、スイッチが入ると作動し始め、細胞の若返りや代謝の促進がみられ、老化を遅らせることが分かってきました。

サーチュイン遺伝子にスイッチを入れ活性化するためには、まず食事量をかなり抑えることが必要な条件といえます。具体的には、一日1200kcal、蛋白質50gが適当といわれますから、通常私たちが食べている半分程度を想像されるとよいでしょう。ただし、小食でもバランスがとれた(偏食のない)食事内容にする必要があります。

また、ポリフェノールの一種、「レスベラトロール」を摂ると、サーチュイン遺伝子にスイッチが入ることが分かっています。ワインやブドウ、ピーナッツの皮などに含まれていますが、レスベラトロールを200~300㎎摂取しなければ、サーチュイン遺伝子は活性化しません。赤ワイン1本でレスベラトロール1㎎程度ですから、なかなか実際には実現困難といえます。

サーチュイン遺伝子にスイッチを入れる物質

そこで現在、サーチュイン遺伝子のスイッチを入れるのに最も効果的といわれているのがNMNという物質です。

このたび、ワシントン大学の今井眞一郎教授は、レスベラトロールよりも寿命を延ばす能力が高いとされる「NMN」をヒトに投与し、安全性や効果を確かめる臨床研究をワシントン大学と慶応大学と共同で、早ければ2016年7月にもスタートさせると発表しました。

すでに2011年、今井教授らは、マウスにNMNを投与する実験をおこなった結果、メスマウスの寿命が16%延び、糖尿病のマウスに1週間「NMN」を投与したところ、血糖値が正常に回復したというのです。さらに、生後22カ月(人間では60歳)のマウスに「NMN」を1週間投与したところ、細胞が生後6カ月(同20歳)の状態に若返ったことを確認しました。

そののち、「NMN」は糖尿病に限らず、さまざまな臓器や眼、さらには脳などの老化も改善することが分かってきました。

老化を改善するNMN

NMNは「ニコチンアミド・モノヌクレオチド」の略で、体の機能を保つのに大切なNAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)に変換されたのち、そのNADがサーチュイン遺伝子を活性化させる結果、老化が防止されるというのです。

実際、NADが不足すると、目立って老化が著しくなります。このため、NMNを摂取して、NADを増やすことが老化の防止につながると考えられています。

NMNやNADは、誰の体の中にもありますが、残念ながら加齢とともに減ってしまうのです。したがってNMNをつくる能力が落ちてくるとされる60歳あたりから、“予防薬”としてNMNを補給するのが効果的と考えられます。

また、一方では糖尿病や認知症などの症状を改善するため、“治療薬”としてNMNを用いることが考えられています。

一方、今井教授によれば、NMNはある種の癌の発育は抑えるようですが、白血病の細胞にNMNを与えると逆に活性化して、増殖を促す結果になるというのです。誰にでも投与すればよいというものではないようです。

今後、ヒトを対象とした臨床研究を重ね、一刻も早く、どのような人に使えるか、使えないかを明らかにされることが期待されます。

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