記憶のメカニズム

考える

海馬

記憶は海馬といわれます。

食欲、性欲、喜怒哀楽などの本能や感情を司る大脳辺縁系の中心にあって、親指ほどの大きさですが、形がタツノオトシゴに似ているため海馬と名づけられました。

まずわれわれの目や耳から入った情報は大脳皮質の視覚野や聴覚野に入り、そこから一斉に海馬へ運び込まれます。

小さいながらも海馬はスーパーコンピューター顔負けの大容量記憶装置なのです。

情報は電気信号としてタツノオトシゴを一周して(パペッツ回路という)いったん大脳新皮質(側頭葉や頭頂葉)へ戻っていきます。

このとき海馬のなかでは神経細胞が横方向に繋がっていて一時的に(数週間)記憶を保存するのです。

海馬での記憶は数週間で消えてしまいますが、大脳皮質(主に側頭葉)ではこれを圧縮してコンパクトな形で生涯保存しようとします。

そして過去の記憶を思い出そうとするときは、海馬がまず刺激されたのち、海馬を介して大脳皮質で記憶が再現されると考えられています。

海馬を必要としない記憶

同じ記憶でも技術に関する記憶はこれと少し異なります。

昔取った杵柄というように、長年鍛えた技術は歳をとって記憶力が低下しても保たれているものです。

つまり技術に関する記憶は知識やおもいでの記憶とちがい、海馬を必要としないのです。

運動を管理している大脳基底核(大脳辺縁系の外側)と小脳が海馬のかわりをしているからです。

こうして鍛錬をつづけることにより、技術の記憶は大脳新皮質の補足運動野や運動前野にプログラムされ、体得したわざになるといわれています。

脳神経細胞の死滅

ところで脳の重さは30歳代前後でピークを迎え、50歳を過ぎると特に神経細胞の死滅が目立つようになります。

こうして80歳までに20~30%の脳萎縮(神経細胞の死滅)がおこってしまいます。

なかでも萎縮が強いのは、記憶にかかわる海馬、側頭葉と思考・判断を行う前頭葉といわれています。

歳をとると記憶力、思考力、判断力が低下するのはやむをえないともいえましょう。

アセチルコリン

最近、記憶装置については海馬だけでなく、海馬周辺(海馬傍回)も重要な働きをもち、大脳皮質の働きに似た能力をもっていることが分かってきました。

そしてパペッツ回路(海馬および海馬周辺)から、副交感神経を刺激するアセチルコリンという神経伝達物質かでていて、これを遮断すると、記憶ができなくなることが分かっています。

痴呆症の代表格であるアルツハイマー型痴呆では、この海馬傍回の神経細胞の脱落がみられるため、現在、アセチルコリンを分泌する細胞を移植しようとする試みがされています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする