人工細菌の登場

病院一部の宗教家からは「神の領域へ足を踏み入れようとしている」と非難されそうな話しです。

このたび、ヒトのゲノム解読に携わったクレイグ・ベンター博士の率いる研究所が、「人工細菌」を作ることに成功しました。

つまり、DNAをつないで実際に機能するゲノム(すべての遺伝情報)を人工的に作ることに成功したわけで、自己増殖機能も備えていることから、一部には「人工生命の誕生」という評価もされているようです。

具体的には、まず牛の感染症を起こす細菌「マイコプラズマ・マイコイデス」のゲノムをコンピューターでデータ化しました。

「マイコプラズマ・マイコイデス」を選んだのは、遺伝情報にあたる塩基配列が少なく、操作が容易だったからだそうです。

この細菌のゲノムをまねて、ゲノムを構成するDNAの断片を化学的に合成しました。

この断片を大腸菌と酵母に入れて遺伝子組み換えでつなぎ合わせ、1本につなげて、ゲノムをまるごと再現し、人工ゲノムなるものを作ったのです。ここまでは、完全に人工的産物です。

完成した人工ゲノム

完成した人工ゲノムを働かせるためには、移植先の細胞が必要です。

そこで、別種の細菌をモデルに選び、その細菌からゲノムを取り除き、用意した人工ゲノムをモデル細胞のなかへ移植することにしました。

その結果、人工ゲノムを移植された細菌は人工ゲノムによって変身し、「マイコプラズマ・マイコイデス」の蛋白質を作るようになりました。

すなわち、移植された人工ゲノムが働き始め、タンパク質を生成しさらに自己増殖をし始めたのです。

この事実は、希望するゲノムを設計して微生物に組み込めば、様々の能力をもった細菌を作り出せる可能性があることを示しています。

現在、研究チームは、この方法を、生命の基本的な仕組みの解明や、環境・エネルギー問題の解消に役立てようとしています。

このため最も注目しているのは、バイオ燃料を大量に生産する藻や温室効果ガスの一種である二酸化炭素を除去してくれる藻の研究、水質浄化などに役立つ新たな細菌の研究・開発です。

さらには抗生物質など医薬品の開発や、新たな食品成分・化学物質の研究、またワクチンの効率的な開発にも威力を発揮しそうです。

しかし一方でこの技術は、バイオテロなどの犯罪に利用される危険も併せ持っており、用意周到な対策を講じる必要性が求められています。

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