体内時計

時計
私たちの体には、いたるところに体内時計があって、それにしたがって体温や血圧・脈拍などを一定に整えています。

つまり、からだの臓器にはそれぞれ時計細胞(末梢時計)があって、それぞれが別個に時計を刻みながら臓器を動かしていることが分かっています。

たとえば胃の中に食物が入ってくると、ペプシノーゲンという消化酵素を分泌しますが、これは胃にある体内時計のアラームが鳴って、ペプシノーゲンを出すようにと指示しているのです。

しかし胃腸のほか、心臓・腎臓・肝臓・皮膚・血管など各臓器が主に働く時間帯はそれぞれ異なりますから、体内時計のアラームの時間もまちまちです。ただし時計のまわる周期はどれも同じ24時間です。

このため、オーケストラの指揮者のように、各臓器が24時間一定のリズムで動けるように統括するところが必要となります。

その指令塔にあたるところは主時計と呼ばれ、脳の視床下部にある直径2㎜ほどの視交叉上核という部位にあります。

体内時計の周期

1日は24時間ですが、体内時計は1時間長く、25時間を1周期としています。

ただ体内時計は光に敏感で、光を受けることで体内時計を調整する仕組みが備わっているのです。

すなわち、脳にある主時計は朝日を浴びると交感神経が刺激されてコルチゾールを分泌します。すると体は活性化され、体内時計が1時間早くリセットされて24時間ペースに調整されるのです。

また体内時計がリセットされて15時間たつと、今度は睡眠を促すメラトニンが分泌されて副交感神経優位となり、リラックスして眠りにつきやすくなります。

一方、末梢時計は朝食を摂ることで毎朝リセットされ、脳の主時計と同調することで、1日を正確なリズムで刻むようになります。

したがって朝食を抜くと、末梢時計がリセットされず、2つの時計がバラバラに働くので、リズムが乱れ、脂質の代謝異常やホルモンの分泌異常を招いてしまいます

鍵を握る時計遺伝子

また最近、驚くべきことに、遺伝子のなかにも24時間のリズムを刻む機能を持つものがみつかってきました。

これを時計遺伝子と呼び、現在約20種類がみつかっていますが、実際にはかなりの数になりそうです。

この時計遺伝子こそが体内時計のカギを握っているようなのです。

ところでDNAの遺伝情報が使われる場合には、それに必要な一部の遺伝情報のみがDNAからRNAにコピーされ、そのRNAから目的のタンパク質がつくられています。

この時計遺伝子がコピーされたRNAが作り出す蛋白質の量を調べた結果、朝によく働く朝遺伝子や、昼によく働く昼遺伝子、夜よく働く夜遺伝子がみつかりました。

しかし直接この遺伝子をとりだすことは困難なため、それぞれ遺伝子によってつくりだされる朝物質・昼物質・夜物質を測定し、体内時計の時刻を知る方法にしようとしています。

このように時計細胞(末梢時計)がそれぞれ別個に24時間のリズムを刻むメカニズムは、各時計細胞の時計遺伝子にスイッチがあり、これがオンになったり、オフになったりして時計物質を調節していることが分かってきました。

すなわちスイッチオンになって時計物質があるレベルまでつくられると、スイッチオフとなって製造中止となります。

つくられた時計物質が体で消費され、あるレベルまで少なくなると、ふたたびスイッチオンになって時計物質つくられ始める。

このサイクルが24時間周期で繰り返されているのです。時計物質はマウスの血液中に300種類もみつかっていますから、われわれのからだにも相当の時計物質があることが予想されます。

様々な時計物質の役割

たとえば我々のからだに脂肪を溜めこむ指令を出すBMAL1(ビーマルワン)という時計物質が見つかっています。

ビーマルワンは、起床後14時から18時間後最大に達します。つまり昼間は減っていますが、深夜10時以降には増えてきますので、夜食をとるとからだに脂肪がつきやすくなってしまいます。

また朝食にタンパク質を摂ると、胃から小腸の時計遺伝子が動き始め、その信号が肝臓にも伝わってエネルギー代謝が始まります。

つまりタンパク質の少ない朝食では、時計遺伝子がリセットされず、内臓の機能は休止したままになります。

このように食生活が不規則になると体内時計がうまくリセットできず、高血圧・肥満・糖尿病などの生活習慣病を起こしやすくなるのです。

つまり主時計である脳の時計遺伝子は、朝日を浴びることでリセットされ、末梢時計である内臓の時計遺伝子は、朝食を摂ることでリセットされているのです。

現在、この体内時計のメカニズムを利用してガンの治療をしようという試みがなされています。

つまり抗ガン剤は正常細胞をも傷害するため、大量に投与することができません。

そこで抗ガン剤を、正常細胞の活動が最も少ない午前4時頃最大量になるよう設定すると、抗ガン剤が正常細胞を避けてガン細胞を集中的に攻撃できるというものです。

さらに、最近の研究では、24時間のリズムを刻む「時計遺伝子」とは別に、365日のリズムを刻むカレンダー遺伝子も見つかってきました。

興味深いことに、時計遺伝子カレンダー遺伝子は、それぞれ地球の自転公転と同じ時間を周期にして動いているのです。