piPS細胞の登場

マウス
一年前、再生医療の切り札として山中教授らにより開発されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)はその後、60%がガン化することが判明。

4個の遺伝子をウイルスにくっつけて細胞内に注入すると、どうしても注入された細胞の遺伝子に傷がつきやすく、発ガンを引き起こすのではないかとの憶測を呼んでいました。

こうしてiPS細胞研究にとって、ガン化をいかにクリヤーするかが最大の研究課題となってきました。

これに対し、山中教授らは2007年、遺伝子を3個に減らしてiPS細胞の作成に成功。ここまでは日本が最先端を走っていました。

しかし2008年、米スクリブス研究所の米独チームがこの遺伝子を2個に減らすことに成功、2009年2月には独マックスプランク分子医薬研究所が1個に減らすことに成功しました。

そしてついに、2009年4月、米スクリブス研究所米独チームは遺伝子を0にすることに成功したと発表しました。

事実であれば、もとの細胞の遺伝子を傷つけず、最大の難関・ガン化をクリヤー出来たことになります。

発表によれば、米独チームは山中教授の用いた4個の遺伝子を大腸菌に組み込んで蛋白をつくらせ、この蛋白が細胞のなかに入りやすいように改造しました。

そのうえで遺伝子のかわりにこの蛋白をマウス胎児の細胞に注入し培養したところ、iPS細胞の作成に成功したというのです。

そもそも蛋白質の分子量は非常に大きいため、細胞膜を通過させることは容易でありません。

つまり、蛋白をマウス胎児の細胞に注入する技術はきわめて困難でした。

米独チームが目をつけたのは2001年、熊本大学富沢教授が開発した手法でした。

すなわち、蛋白の端に11個のアルギニン(アミノ酸のひとつ)が結合したポリアルギニンをくっつけて細胞膜を通過しやすくするという手法です。

こうして皮肉にも日本の研究者の開発した技術をもちいて、遺伝子を使わずにiPS細胞の作成が可能になったのです。

米独チームはタンパク質「protein」の頭文字をとって”piPS細胞”と命名しました。

まだ、安全性や細胞分化能などの点で問題は残っていますが、画期的な成果であることは論を待ちません。