社会的手抜き(リンゲルマン効果)

社会的手抜きの心理

ある仕事に取り組む場合、ひとりでやる場合は精一杯の努力をするが、大勢で取り組むと、ひとりひとりのパワーは、人数が増えるほど少なくなるという理論です。

つまり、大勢になればなるほど、他の人がなんとかしてくれるだろうという手抜きの心理です。

今から100年前、農学者のリンゲルマンは綱引き実験をし,その牽引力を測定しました。

その結果,1人だけの牽引力を100%とすると、2人で引っ張ると1人当たり93%、5人では70%、8人では半分になってしまうことが分かりました。

この傾向はその後、多くの研究者によって実証されたのです。

たとえば、まわりが優秀な集団であると、人一倍努力しても成果はほとんど目立たない。

結局自分の力では、頑張ろうが頑張るまいが結果には影響しないので、手抜きしてもいいやという心理。

また逆に、まわりが仕事に不熱心な集団であると、自分ひとり頑張っても馬鹿らしいので、手抜きしてしまおうという心理。

こういう心理が働いて、無意識のうちに手を抜いてしまうというのです。

社会的手抜きの実際

この心理は私たちの生活の中で、知らぬ間に働いているようです。

たとえば、自分の親の介護にしても、兄弟それぞれが嫌がって互いに押し付けようとする情景は日常茶飯事にみられます。

この心理は、兄弟みんなが親の介護を嫌がっているのだから、自分だけが引き受けることはないという手抜き心理です。

また、公衆の面前で誰かが倒れたとします。日頃は人権擁護を唱えていても、残念だけど今自分は急いでるんだから、誰かが助けてくれるだろうと自己弁護して、その場を去ろうとしないだろうか。これなども手抜き心理のひとつといえそうです。

また大勢のいるなかで、暴行事件がおこることがあります。しかし、たいていの場合、自分の身に災いが及ぶのを恐れ、誰も手を出そうとしない傾向があります。

誰かが手助けするだろうという期待と、危険を冒してまで自分だけが手を出さなくてもいいだろうという群集心理が働いていそうです。

これなども社会的手抜きの延長線上にあるといえます。

この傾向は、個人が特定されにくい人口密集地ほど頻繁にみられるようです。

また、男女の比較では、男性のほうが女性よりも手抜きする傾向がみられるといわれます。

これは、女性のほうが周りとの関係を重視し、協調性が高いからではないかと推測されています。

なかには、まったく手抜きをしないひともいますが、私たちの多くは社会的手抜きをしながら生活しているのが実情でしょう。

ひとは誰でも、自分の努力したことは人に認めてもらいたいと思うのが自然です。ところが、それがまったく注目されないと、やる気がなくなるというのも事実でしょう。

自然と社会的手抜きをしがちになるといえます。

社会的手抜きを防ぐには

そこでこの社会的手抜きを防ぐためには、仕事をする人に、自分ひとりくらいという考えから自分がやらなければという考えに変えていく必要があります。

そのためには、集団の全員に目的意識をはっきり持たせることが大切です。

さらには個人の仕事ぶりがはっきり分かるようにすることも必要です。

同時に、個人個人に責任をもたせ、仕事を本人の裁量でおこなわせることも必要でしょう。

それによって責任感が生まれ、仕事をする気力も湧いてきそうです。

この問題は決して新しい話題ではなく、長年支配者を悩ませてきたもので、たとえば、米沢藩主・上杉鷹山はしてみせて、言ってきかせて、させてみよと説き、連合艦隊司令長官・山本五十六は、やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじといい、古来、上に立つひとは常にこの問題に悩まされ、褒めてやらねば、人は動かじという心境に達したといいます。

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