薬剤性大腸炎とは

薬剤を多量に使用したために、腸内に普段棲んでいる細菌が死滅し、この薬剤に抵抗性を示す別の細菌が増殖して大腸粘膜に炎症を起こし、下痢や血便をおこす病気です。

抗生物質、抗がん剤、経口避妊薬、非ステロイド性抗炎症剤などが原因となりますが、とくに抗生物質によることが多いようです。

抗生物質が原因となる腸炎
偽膜性大腸炎

セフェム系抗生物質や合成ペニシリン系抗生物質の投与により、従来腸にいた細菌が弱体化し、これに代わって、クロストリディウム・ディフィシル菌が産生した毒素により腸炎を起こすものです。

高齢者、術後の患者さんに発症することが多く、直腸とS状結腸に多発する黄白色の偽膜が特徴です。

原因物質の投与を中止し、メトロニダゾールやバンコマイシンを服用します。

急性出血性腸炎

主にペニシリン系の抗生物質を使用したあと、大腸の深部にびまん性に出血する大腸炎です。

合成ペニシリンなどによる菌交代現象やペニシリンアレルギー説が唱えられていますが、正確な原因ははっきりしません。

クレブシエラ・オキシトカ菌はクロストリジウム・ディフィシル菌と違って毒素産生は認められませんが、この腸炎の発生に何らかの関与をしているようです。

抗生物質を中止すれば、すみやかに軽快します。

比較的健康な若年者に多くみられます。

MRSA(メチシリン抵抗性黄色ブドウ球菌)腸炎

寝たきりの高齢者や免疫能の低下した胃切除術後のかたへ、抗生物質を使いすぎた結果、黄色ブドウ球菌の治療薬・メチシリン(ベータラクタム系抗菌剤)に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌がはびこっておこる腸炎で、院内感染の首位を占めています。

さらに病院内での消毒剤の多量使用が消毒剤に耐性をもつMRSAの出現を招く結果になったと考えられています。

術後数日を経て下痢や高熱で発病し、クリーム色の水様の大量下痢 を来します。

手指を介した接触感染、飛沫感染、カテ-テル等治療器具を介した感染が考えられています。

ただちに原因となる抗生物質を中止するとともに、脱水に対して大量の輸液をおこないます。

その治療の切り札としてバンコマイシンが用いられていますが、近年さらに、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE:バンコマイシン・レジスタント・エンテロコッキー)が登場し、その院内感染が問題になっています。

非ステロイド性抗炎症剤が原因となる腸炎

非ステロイド性抗炎症剤使用のあと、多くは1カ月以内に血の混じる下痢、腹痛、貧血などをおこしてきます。

なかには数カ月服薬したのちに発病するケースもみられます。

また逆に、無症状のまま経過し、大腸ガン検診の便潜血検査で陽性となり、内視鏡検査で偶然発見されることもあります。

内視鏡検査では、盲腸付近を中心に赤くただれが広がる場合が多く、ときには、さらにひどくなって潰瘍を作ってくることもあります。

使用薬剤を中止し食事療法で腸管庇護に努めれば、比較的短期間で治癒します。