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(19) ついにトリアージ(命の選別)の気配 | 浦岡胃腸クリニック

COVID 19

新型コロナウイルス

(19) ついにトリアージ(命の選別)の気配


緩かった検疫のツケ
今や新型コロナウイルスのほとんどが、猛烈な感染力をもつデルタ株(インド型)に置き換わり、関東圏を中心に感染爆発を起こしているのはご承知のとおりです。
今更言うまでもないことですがコロナ感染症対策の基本は、①ウイルスを持ち込まない、⓶持ち出さない 、③感染を拡げないです。
陸続きのユーラシア大陸ではいくら検疫を厳しくしても、隣国からウイルスが入り込むのは致し方ありませんが、外国と海を隔てた日本では、厳重な検疫さえしておけば、今日のような惨状には至らなかったのです。
感染対策のいろはである「ウイルスの持ち込み阻止」の失敗、すなわちズサンな検疫こそ現政権が冒した最大の失策であったと私は考えています。同じ島国のニュージーランドや台湾が防疫に成功しているのをみれば、検疫がいかに重要であるかがよく分かるでしょう。
 
日清戦争後、コレラが蔓延する中国から23万もの日本軍兵士が引き揚げました。
このとき検疫の責任者・後藤新平は、急遽大規模検疫所を建設して帰還兵全員を検疫し、369人のコレラ感染者を隔離して国内の感染拡大を阻止しました。のちに東京市長(現在の都知事)になった後藤は医師でもあり、ことの重大さを把握できていたからこそ、このような離れ業をやってのけられたのです。
今の政府に後藤の教訓はなにも伝わっていなかったということになります。感染症対策専門家の意見に耳を傾けず、自分たちの政策に都合のいい部分だけを採用してきたつけが、今日表れてきているのではないでしょうか。
とくに半年前から、専門家よりデルタ株の危険性が再三喚起されていたにも関わらず、無策のままその侵入を許してしまったのは、返す返すも残念でなりません。
 
禍根を残した五輪大会
政府は一貫してオリンピックと感染拡大は無関係と主張していますが、事実を認めなければ、今後の対策をたてるスタートラインに着くことが出来ません。
オリンピックがなければ、ここまで感染爆発しなかったというのは紛れもない事実です。
その理由は簡単です。新型コロナはひとが運ぶことによって広がる病気だからです。
今回オリンピックを開催するにあたり、海外の航空会社も日本路線を相次いで再開させ、政府も数万人に及ぶ五輪関係者、メディア関係者の入国に便宜を図り、易々とウイルスの侵入を許してしまったことは残念でなりません。
デルタ株は国内で発生したのではありません。緩んでしまった検疫の網を潜り抜け、海外から持ち込まれたことを忘れてはならないでしょう。
感染症対策の基本「①ウイルスを持ち込まない」が、出来ていなかったということです。
 
また、オリンピックのおかげでデルタ株をもった大会関係者が容易に入国してしまったこと、さらには19万人におよぶ警備、輸送などの業務委託業者、メディア、ボランティアなどが、規定通りPCRを受けないまま行動したため、ウイルスを拡散させてしまったのです。
確かに、選手や大会関係者に施行した62万件の PCRからは、138人しか感染が見つかっていませんが、業務委託業者やメディア、ボランティアを含めると400人を超える感染者が見つかっているのです。
感染症対策の基本「③感染を拡げない」が、不完全だったということです。
 
ウイルスの拡散をどう防ぐか
連日の感染爆発のニュースとともに、複雑な国民感情のなかでオリンピックは閉会しました。
さて、政府はこれからの日本の医療をどうする腹積もりなのでしょうか。
私は、現政権が冒したもうひとつの重大な失策は、侵入してしまったウイルスの拡散を全力で抑え込もうとしなかったことだと思います。
これが1年前なら、エピセンターでの集中的PCR検査(児玉東大名誉教授提言)が極めて有効でした。しかし政府がこの提言を等閑にした結果、今では手の付けようがないほどに蔓延してしまったのです。
 
今や国民は、自宅にじっと留まるグループと、警戒心なく出歩くグループにはっきり分かれているように思われます。感染を広げているのは当然後者ということになります。
いくら感染爆発しようが、連休には予定通り外出する人たちを、自宅待機組は憎々しげに見つめていますが、コロナ分科会の尾身会長が指摘されるごとく、政府がロックダウンを法制化でもしない限り、人々の流れに歯止めはかからないでしょう。
この期に及んで、政府が国民に向かって自宅にいてくださいなどと弱々しい提言しか出さないことに、もどかしさを禁じ得ません。
政府は国民の命を守るために、時には心を鬼にせねばならないこともあると思うのです。
 
ロックダウンは最後の手立てとしても、例えば新幹線や飛行機の便数を制限するとか、空港、駅、港湾でPCRや抗原検査を義務化するとか、ワクチン証明書がなければ県外移動を禁止するとか、飲食店の来客に抗原検査を義務付けるとか、感染拡大を阻止できることなら何でもやるという気概を示してほしいのです。
歩き回っているウイルス感染者を一刻もはやく見つけ、移動させないようにするしか、方策はないのですから。
 
ついにトリアージ(命の選別)の気配
ところで医療関係者のなかには、首都圏の医療はすでに破綻しているという見方をする人が増えています。
東京では1日感染者が5000人を越えました。10日で5万人、1か月で15万人の新規感染者が出ることになります。
現在の都内入院患者は3500人(うち重症者150人)、自宅療養者は18000人に上ります。感染者の多くは入院を希望しますが、都が用意できたベッド数は6000(実際稼働可能なのは4000程度か)ほどですから、今後入院できるかたは、かなり厳選されそうです。
また、たとえベッドはあっても、医療スタッフの数が絶対的に不足しているのです。事実、1人の患者さんが数十軒の病院に問合せしなければ入院が決まらないほど、事態は切迫しているのです。政府に中等症なら入院可能ですと言われても、ベッドや医療スタッフが揃わなければ、絵に描いた餅にすぎません。
政府は、若い人はすぐに退院できるから心配ないなどと気休めを言っていますが、危機的状況に変わりはなく、すでに一部の病院ではトリアージ(命の選別)が始まっていると聞きます。
複数の感染者が運び込まれたら、助かりそうにない人より、助けられそうな人を優先する選別が行われるというのです。状況によっては、弱っている高齢者は適切な治療が受けられないという衝撃的な話しです。
 
政府はこの現状を国民に吐露すべきで、国民全員で危機意識を共有しなければ国難を乗り越えることはできません。
さらにデルタ株は、厄介な後遺症を残す危険があることを公表し、こぶしを振り上げて、国民に自制を促してほしいのです。
 
じつに感染者の半数が家庭内感染によるといわれている今、政府は極力、感染者を家族から隔離する施策をとらなければなりません。
都内で1か月10万人も発生する感染者を収容するためには、ホテルの確保などでは到底間に合いません。
発想を変え、大型公共施設などに千人規模の患者を収容できるベッドの設置計画を一刻も早く実施しなければ、トリアージによる犠牲者が益々増え続けるのではと危惧します。
 
ワクチンでデルタ株を抑え込めるか
最後にワクチンについてです。
まず高齢者にワクチンを接種する施策は比較的順調に経過しましたが、次は感染爆発している地域の若者に接種すべきという声があるものの、進捗状況ははかばかしくありません。
政府は11月までに国民の70%にワクチンを接種し、これで集団免疫が得られれば、新型コロナを終息させることができると期待しているようです。
しかし、分科会の尾身氏は、現在蔓延しているデルタ株の感染力は強いので、接種していない30%の中で伝播が続くのに加え、ワクチン接種で得られた抗体価も低下してくるため、コロナは容易に終息しないのではと警鐘を鳴らしています。
 
かなり悲観的な意見ですが、一方で、明るいニュースもあります。2つの中和抗体を組み合わせた「抗体カクテル療法」という新しい点滴薬が、先月、厚生労働省で特例承認されたのです。現行ワクチンの約10倍という価格のため、誰にでも使うというわけにはいかないでしょうが、重症化リスクを持つ軽症、中等症のかたにかなりの効果が期待できそうです。
この感染症が一刻も早く終息することを願わずにはおれませんが、当面は最悪の事態に備え、換気、マスク、手洗いなどの対策を続けなければならないでしょう。

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