ガン遺伝子という名がついていますが、いつもからだによくないことをしているのではありません。
それどころか意外にも、普段は細胞が分裂するのに重要な働きをしているのです。
すなわち、ガン遺伝子というのは本来、細胞を増殖させる働きを持つ遺伝子なのです。
われわれは生きている限り、死滅していく細胞を補うために、自分の細胞を増殖させなければなりません。
平生、ガン遺伝子はその増殖をコントロールする重要な働きをしているのです。
このように普段は節度ある細胞の増殖を受け持っていますが、紫外線やウイルスなどによりガン遺伝子に突然変異がおこると、細胞の増殖に自制がきかなくなり、無制限に増殖するようになります。
普段は暴走しないようにロックがかかっているガン遺伝子が、突然変異でロックがはずれ、暴走をはじめたともいえます。
これがガン化の始まりです。
ただ、一つのガン遺伝子が異常になっただけでは発ガンには至らず、運悪く複数の遺伝子に異常が重なった場合にのみガン化が引き起こされてしまうのです。
ですから、ガン遺伝子をもっているからといって、それだけでガンになるわけではなく、誰もがガンになるわけでもありません。
最も代表的なガン遺伝子は K-ras(ケーラス)遺伝子です。
これは第12番目の染色体上に乗っかっています。
膵臓癌の8割、大腸癌の4割、肺癌の2割にK-ras遺伝子の突然変異がみられるといわれています。