ガンを自動車にたとえると、ブレーキがはずれて猛発進してしまうようなものですが、このブレーキの働きをしているものがガン抑制遺伝子です。
ガン抑制遺伝子は現在、P53、RB、APC遺伝子など約30種類がみつかっていますが、ガンの半数以上(すい臓がんでは80%)に異常が見られるというP53遺伝子が最も代表的なガン抑制遺伝子です。
P53遺伝子から作られるP53タンパクの分子量が5万3千のためP53と呼ばれています。
P53遺伝子は、単にブレーキの働きをしているだけではありません。
まずは、細胞増殖がうまくいっているか監視する司令塔のような立場にいて、常に遺伝子の配置をチェックして、キズを見つけるとそこへは栄養が行かないように兵糧攻めにして細胞の分裂増殖を停止させます。
さらに、遺伝子のキズ以外の項目もチェックしていき、異常があればできるかぎり修復します。
もしうまくいけば、再び細胞増殖をスタートさせるという努力を日夜つづけているのです。
そのうえで修復が自分の手に負えないと判断すると、その細胞をひそかに自殺させるよう誘導していきます(アポトーシス)。
これは実に涙ぐましいまでの作業であって、もし失敗すると異常な細胞増殖が開始され、ひいては宿主そのものの命をおびやかすことになってしまうのです。
P53遺伝子が守護天使(ガーディアン エンジェル)の異名をもつ理由が分かっていただけるとおもいます。