我が国の検診受診率は20~30%と、欧米の受診率70%にくらべきわめて低調です。
これでは検診は意義あるものとはいえません。
とくに胃ガン検診ではバリウムを飲んだり、内視鏡検査が必要になるため、経済的にも肉体的にも負担が多く、受診率が上がりにくいのです。
そこで、血液をとっただけで、胃ガンになりやすいか否かが分かれば、なりやすい人たちだけを検査すればよいということになります。
ABC検診とは、その要望に応えた、胃ガンになりやすいかどうかを調べる検査です。
決して胃ガンがあるかどうかを調べる検査ではありません。
ABC検診のキーワードはピロリ菌の感染と萎縮性胃炎です。
どちらも血液検査(費用は4,800円)で可能です。
すでに胃ガンの原因のほとんどがピロリ菌感染であることがわかっています。
またピロリ菌感染によって胃粘膜の萎縮が進むほど、血液中のペプシノーゲン(消化酵素ペプシンのもと)の濃度が下がり、胃ガンが発生しやすくなります。
ちなみにペプシノーゲンが基準値以下の人は、6~9倍胃ガンになりやすいことがわかっています。
この事実にのっとって、ピロリ菌に感染していないかどうか(血液でピロリ抗体を測定)、萎縮性胃炎になっていないかどうか(血液でペプシノゲンを測定)を調べ、両者を組み合わせて胃ガンになりやすいリスク(危険度)を分類したのがABC検診です。
ABC検診のメリットとして、胃ガンのリスクが高いと診断されたかたは、レントゲン検査でなくただちに内視鏡検査をうければよく、逆にリスクが低いかたは、5年に1回程度のレントゲン検査でよいという点が挙げられます。
一方、この方式には欠点もあります。
つまりペプシノーゲン法はあくまでも胃の萎縮の進行度をみる検査であり、胃ガンそのもののマーカーではありません。
つまり結果が陰性でも、癌がないとは言えないということです。
とくに萎縮と関係なく発生する未分化型腺癌や、レントゲン検査では容易に診断できる進行癌が見逃されやすいなどの弱点が指摘されています。
しかしこれらの弱点を指摘されてもなおメリットの大きさを考えれば、ABC検診の意義はきわめて大きいと言わざるを得ません。