健康診断では異常がないのに、知らないうちにからだの血管が痛めつけられ、最悪の場合突然死に至るといわれれば、まったく途方に暮れてしまいます。
つまり、食後1~2時間だけ血糖値が急上昇し、やがてまた正常値に戻る。
糖尿病ではなくても、このような場合、突然死のリスクが高まることが分かってきました。
このような事態が繰り返されると、早いうちから動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしてくるというのです。
たとえば、丼ものやうどんなどの炭水化物を摂って、食後の血糖値が140以上に急上昇(食後高血糖)した場合、グラフにすると、スパイク(くぎ)のようにみえるところから、“血糖値スパイク”と呼ばれるようになりました。
以前から「隠れ糖尿病」とか、「ペットボトル症候群」と呼ばれていたものです。
通常、検診では空腹時の血糖しか調べないため、異常が発見できないのです。
どのような人にみられるか?
血糖値スパイクは、糖尿病が発症する前や、発病してまもない人に多くみられ、朝食を抜いて昼食を摂ったり、昼食のあと随分間があいて夕食を摂る場合におこりやすいことがわかっています。
親族に糖尿病のかたがいて、炭水化物の多い食事を早食いするくせのある人は、特に注意が必要です。
血糖上昇時には、ほとんど症状はありませんが、急に上がった血糖がスパイク様に急降下すると、頭痛やイライラ、集中力の低下などが引き起こされます。
血糖値スパイクを繰り返すと大量の活性酸素が発生し、これが血管の細胞を傷つけ、動脈硬化を引き起こすといわれていましたが、最近、インスリンやTNFアルファなどのサイトカインが動脈硬化を促しているのではないかと、いわれるようになりました。
ただ、食後の血糖値が200を越えない限り、糖尿病の予備軍にとどまっています。血糖値スパイクがあるからといって、いきなり網膜症や腎障害などの合併症を起こす心配はありません。
はやく発見するには?
血糖値スパイクかどうかを知る正確な方法は、ブドウ糖負荷試験を受けていただく必要があります。
とくに健康診断で空腹時100以上、HbA1c 5.6%以上か、親族に糖尿病の人がいる場合には、一度検査を受けておくことをお勧めします。
どのような注意が必要か?
血糖値スパイクを防ぐには、第1に、時間をかけゆっくり食べることと、朝食を必ず摂ることです。
第2に、糖分の吸収を遅くする野菜やきのこなどの食物繊維を先に摂るようにします。ついで魚や肉を摂り、最後に白米の順に摂るようにしてください。
第3にジャガイモ、精白米のご飯、白パンなど血糖の上昇しやすい食品を控え、豆類や玄米、全粒粉のパンなど血糖値の上がりにくい食品を、主として摂るようにしてください。
第4に食事のあとはそのまま休憩せず、30分程度、ウオーキングなど軽い運動を心がけてください。