イギリスがEUを離脱したという衝撃的なニュースが報道されたとき、英国内では「こんなことになるんだったら、反対票を投じておくんだった」と嘆く声が、あちこちで聞かれました。
しばらくして米国でも、泡沫候補といわれたトランプ氏が、おおかたの予想を裏切って大統領に選出されました。
同様に、「こんなことになるんだったら、ヒラリーに入れておくんだった」と嘆く声が、いたるところで聞かれました。
どちらも自分の意思で選択しておきながら、実は自分の本心とは違うんだという矛盾した理屈です。
むろん、いきなり選挙したわけではありません。随分長い間、国民的議論のすえに選出されたのですから、今更なにをといわれても仕方ありません。
リスキー・シフトとは?
じつは、私たちは大勢のなかで話をしていると、だんだん大胆になり、より過激で危険な意見に魅力を感じる性癖があります。
このため、冷静になれば決してとらない危険な行動でも、まわりが大丈夫という雰囲気になると、なんとなく安心して、危険を冒してしまうという傾向があるのです。
よく言われる「赤信号みんなで渡れば怖くない」という心理で、“リスキー・シフト”と呼ばれます。
リスキー・シフトはときに暴走し、オウム真理教事件のような社会的大事件を起こす危険があるのです。
コーシャス・シフトとは?
一方、慎重な意見の多いひとが集まると、逆にますます消極的意見が増幅され、「どうせ無理」とか「自分には関係ない」など、無気力、無責任な意見が大勢を占めるようになります。
このため、議論にいくら時間をかけても、「何も変わらない」、「時間のむだ」など悲観的な見方がされがちですが、見方によっては、より安全で無難な着地という評価にも繋がります。
これを“コーシャス・シフト”と呼びます。
つまり、集団心理というものは、往々にして両極端に傾く危険性をもったものなのです。