膵嚢胞とは
膵嚢胞は、膵臓にできる水疱のようなもので症状はなく、超音波やCTなどで偶然発見されます。
このうち膵炎や膵外傷後に生じた嚢胞を仮性嚢胞といい、自然消失するものもありますが、膵管とつながっている嚢胞では、膵液が流れ込むためさらに大きくなります。良性ではありますが、大きくなると嚢胞内で細菌感染を起こすことがあります。
IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)とは
一方、膵液を流す膵管の粘膜に「粘液を作る腫瘍細胞」ができ、この粘液が膵臓に溜って袋状になったものが「腫瘍性膵嚢胞」です。これが癌化するというので、今問題になっているのです。
以前は「粘液産生膵腫瘍」と呼ばれていましたが、現在では、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)と粘液性嚢胞腫瘍(癌化しやすい)、漿液性嚢胞腫瘍(癌化しにくい)に分けられています。実際にはIPMNがほとんどを占めています。
いわゆる膵臓癌とは異なり、IPMNは良性から悪性へと変化していくことが知られています。しかも発育は非常にゆるやかで、数年から数十年をへて徐々に増大していきます。
IPMNの手術適応は?
IPMNは主膵管にできた腫瘍が粘液を溜める「主膵管型」と、分枝にできた腫瘍が粘液を溜める「分枝型」に分けられます。「主膵管型」は癌化しやすく、「主膵管径が10mm以上」「黄疸」「造影される結節」がみられるとハイリスク群とされ、手術の絶対適応といわれています。
「分枝型」は癌化しにくいといわれます。しかし、貯留する粘液量が増え、周囲の分枝膵管にも粘液が貯まって嚢胞状に膨らむと、“ぶどうの房”のように見えてきます。その大きさが直径30㎜以上で、嚢胞の中に隆起性病変が見られたり、嚢胞の壁が厚くなってくる場合は、癌化の可能性があります。また、嚢胞が短期間に増大した場合も癌化が示唆され、手術の適応となります。
癌は膵管内に留まっているうちは手術できますが、膵管の外に広がると、完治は難しくなります。
IPMN の経過観察
通常、IPMN では症状は出ませんが、粘液が膵管に詰まるようになると膵炎をおこし、腹痛や背部痛がおこってきます。
IPMN の検査は超音波検査が基本ですが、精密検査にはMRI、MRCP、あるいは造影CTが用いられます。
IPMNでは、嚢胞状の拡張膵管と膵管壁の腫瘍を中心に観察しますが、腫瘍の探索には超音波内視鏡検査(EUS)が最も威力を発揮します。また、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)も有用で、膵管と嚢胞の交通の有無が分かるほか、膵液を採取して癌細胞を直接調べることができます。
IPMNが癌化の心配なしと判断された場合は、年2、3回の検査を継続していきますが、IPMNの約半数は他の臓器に癌を合併する危険があるといわれているため、慎重な経過観察が求められます。