第1選択 酸化マグネシウム
便が柔かくなり、便通がよくなるうえに、腹痛など副作用が少ないという点で、「酸化マグネシウム」を用いることが多いようです。
マグネシウムは腸管内の水分が体内に吸収されるのを抑制しますから、腸管の水分が増加し、便を柔らかくするのです。
しかし、血液中にマグネシウムが増えるため、高齢者や腎臓の悪いかたでは、手足のしびれや呼吸困難をおこす危険があります。こういう場合は血液中のマグネシウムを測定しながら使わなければなりません。
刺激性下剤について
また高齢者には刺激性下剤がよく使われます。大腸の蠕動運動が低下しているときは、よい適応です。「プルゼニド、アローゼン」(センノシド)、「アロエ」、「大黄」などが該当します。
ただ、依存性があって習慣になりやすく、便意がおこりにくくなり、効果が徐々に失われていく欠点があります。
したがって、毎日飲み続けないように注意し、困ったときにのみ服用するのが正しい飲み方と言えます。
漢方便秘薬の「大黄」とは?
我が国では、便秘に対し漢方薬が頻繁に使われています。緩下剤の強さは「大黄」の含有量によって決まります。
大黄を最も多く含むのは「大黄甘草湯」と「麻子仁丸」です。
中くらいなのが「潤腸湯」、「桂枝加芍薬大黄湯」です。
「防風通聖散」ではさらに少なく、「大建中湯」、「桂枝加芍薬湯」には全く含まれません。
便秘の強さによって、これらを使い分けします。
漢方便秘薬の「甘草」とは?
また、甘草には大腸の緊張を緩和する作用があり、便秘に伴っておこる腹痛や排便時の痛みを取ってくれます。
この場合は「大建中湯」や「桂枝加芍薬湯」、「桂枝加芍薬大黄湯」がよく効きます。
ただ、甘草に含まれるグリチルリチン酸には、体内に水分や塩分をためる働きがあります。 このため、血圧が上昇したりむくみが出て、腎臓に負担をかけることになります。
高齢者や腎臓の悪いかたは、できれば甘草を含む便秘薬は避けたほうがいいでしょう。
ちなみに甘草を含まない便秘薬は、「麻子仁丸」と「大建中湯」のふたつだけです。
新しい便秘薬の登場
ところで、近年、30年ぶりに新しい便秘薬が登場しました。
その一つが、「アミティーザ」(ルビプロストン)です。
小腸内に多量の水分を分泌し、これが大腸内に流れ込んで便を柔らかくし、蠕動運動を活発にする結果、便秘を改善します。ただし腎臓の悪いかた、妊婦のかたには禁忌となっています。
副作用として吐き気の起こることがありますが、食後すぐに服用すれば避けられそうです。
もうひとつは、「リンゼス」(リナクロチド)です。
リンゼスは腸管内に水分を分泌して水分量を増やし、腸管の動きを活性にして便秘を改善させる働きをします。同時に、腹痛や腹部不快感などの腹部症状を和らげる効果もあります。
また、リンゼスは体内にはほとんど吸収されないため、きわめて安全で、しかも刺激性下剤のように耐性が生じることもありません。
ただし適応が、便秘型過敏性腸症候群のかたに限られています。また、1錠89.9円と、他の便秘薬にくらべ値段の高いのが欠点といわれています。
さらに最近、「グーフィス」(エロビキシバット)が開発されました。
これは小腸の末端部分で、胆汁酸の再吸収を阻害するエロビキシバットにより、大腸に流入する胆汁酸を増やす働きをします。すると、大腸内では水分の分泌が増加し、さらに蠕動運動も活発になるため、便秘が改善されるというものです。
安全性は高く、アミティーザのように禁忌となるケースはありませんが、重症肝臓病や妊婦のかたは控えたほうが良いとされています。また、1錠105.8円と薬価の高いのが欠点といわれています。