2001年、炭疽菌の入った手紙を米国の報道機関や議員宛てに送らるというテロが発生し、22名が感染、うち5名が死亡しました。
その20年前には、ソ連の生物兵器研究所から炭疽菌が漏れ出して市民66名が死亡、またイギリスではバーミンガム大学で、天然痘ウイルスが空調に漏洩し2名の死傷者を出しました。
バイオハザードと聞くと、ついこのような事件、事故を想像しがちですが、実際にはめったに起こるものではありません。
日常では、医師・看護士などが、ウイルスなどに感染した患者さんに注射をする際、誤って血液の付いた針で自分の手の指などを刺してしまう針刺し事故が、バイオハザードの典型例です。
そのほか、感染した動物に噛まれたり引っ掻かれたり、実験室で病原菌を含むエアロゾルを吸い込んだり、誤って飲み込んだり、あるいは除染滅菌廃棄物を処理する際の不注意による感染がみられます。
病原体としては、肝炎ウイルスやノロウイルスなどのほか、赤痢菌・サルモネラ菌・病原大腸菌O-157・ボツリヌス菌などが挙げられます。
バイオハザードな作物
最近では、遺伝子組換えで害虫を強化してしまった作物なども、バイオハザードの仲間に入れられています。
しかしとりわけ懸念されるのは、発ガンを誘発する遺伝子を大腸菌に挿入するような遺伝子組換えがおこなわれれば、無差別テロに用いられる危険性が出てくることです。
このため、2004年、遺伝子組換え生物等の規制による生物の多様性確保の法律(カルタヘナ法)が施行されるようになりました。
現在、特定病原体を含む物質は感染症法や家畜伝染病予防法で、感染性廃棄物は廃棄物処理法で規制されるようになっています。
検査室、実験室からバイオハザード物質が漏れるのを防ぐためには、まず滅菌器の設置・予防衣・マスク・手洗いなどが必須です。
また、使用済み注射針はリキャップせずそのまま廃棄物入れに捨て、汚染物質は次亜塩素酸ナトリウムや石炭酸によって除染を行う必要があります。
さらに、バイオハザード物質の輸送にあっては、試験管やシャーレ等の一次容器と気密性のある二次容器、そして一次容器と二次容器の間に、破損した場合に備えて吸収剤を挟み、その上を衝撃から守るための堅固な三次容器で保護するように義務付けられています。