雨を降らせるには、雲の中に核になる粒子と氷点下の雲が必要になります。
核になる粒子とは空気中に浮かぶ微小な粒子で、海面で砕けた波が吹き上げられた塩の粒子や、陸上から巻き上がった砂塵の粒子です。
雲の中がマイナス15℃以下になると、この粒子の周りに発生した氷の粒が核となって周囲の水蒸気を吸収して雪片となり、雲の中を落下して成長しながら、途中で溶けて雨粒となって降ってくるのです。
ところが、ある程度発達した積雲や層積雲の中は、氷点下ではあってもマイナス15℃になるまでは、雲の中の粒子は水滴のままで雪片はできないため、雨は降りません。
ところで乾季が続くと各地で水不足が深刻となり、人工的に少しでも雨を降らせたくなります。
人工降雨の仕組み
そこで雲のなかへ、強制的に雪片を作るような物質を散布してやれば雨を降らせるのではないか、というのが人工降雨の考え方です。
まず上空から飛行機でドライアイスやヨウ化銀・液体炭酸を雲に撒布し、雲の中の温度を下げます。
そしてドライアイスの粒を核として氷の結晶を造ります。ヨウ化銀の場合は、その結晶の格子が六角形で、氷や雪の結晶によく似ているため、雪片をつくりやすい性質があります。
このほか、ロケットや大砲により打ち上げる方法もありますが、ヨウ化銀の場合は、地上に設置した発煙炉から煙状にして噴射し、上昇気流に乗せて雲に到達させる方法もあります。ヨウ化銀が雲の中の水蒸気と結びつき氷の結晶から雪片となり、雨となって地上に落ちてくるのです。
ただ、ヨウ化銀には弱い毒性があるため、環境への影響が懸念されています。
人工降雨は、ある程度の雨雲がなければ降雨させることができません。しかも自由に降水量を制御できるわけではなく、現在の技術では、本来の雨量の1割程度しか増加させることができないといわれています。