COVID 19

新型コロナウイルス

(6)PCRと抗体検査は受けるべきか


新型コロナウイルス(以下新型コロナと略す)感染症の 80%は、なにもしなくても自然に治ってしまいます。これが、あわてて病院に行かなくても、自宅で休んでおればいいという論拠になっています。

ところが、熱が下がらない、咳が止まらないなどの症状が続く、残り 20%の人たちが問題で、この方々は重症に陥りやすいので病院に入院して手当てしましょうというのが我が国の方針です。

なかでも肥満、糖尿病、高齢者のかたが感染すると重症化しやすいので、慎重な看護、治療が求められているのです。

この場合には、感染初期なら「アビガン」、「レムデシビル」ついで「アクテムラ」「フサン」などの薬剤投与が考慮され、重症化すれば人工呼吸器、体外式膜型人工肺( ECMO)を駆使して、なんとか快癒に向けて尽力しています。

ところで我が国では、新型コロナ感染者の死亡率は 4~ 5%で、通常インフルエンザの死亡率にくらべ、 10~ 100倍とかなり高率です。

そのうえ最近になって、このウイルスの憂慮される一面が見えてきたのです。

そのひとつに、「病状の急変」という病態があります。急に悪化することが少ないインフルエンザと異なり、それまで元気だった人がある日を境に突然呼吸困難となり、数日で肺に水が溜り、あたかも溺死するごとく息ができない状態で死亡するというのです。

多くの元気な有名人が突然死に至るのを見て、恐怖を覚えたひとは少なくなかったでしょう。

その病態を観察するに、このウイルスが血管内に入り、炎症をおこすと大量のサイトカインが分泌されます(サイトカインストーム)。すると血液の凝固異常が引き起こされて傷口に血栓をつくり、これが剥がれて肺塞栓、脳梗塞、心筋梗塞などをおこすことがわかってきました。

致死率の高い原因のひとつが、このあたりにあるようです。こうしてみると、なかなか手ごわいウイルスだということが分かります。

  今後、 PCR検査はどうするか

諸外国の感染対策を俯瞰すると、国民に幅広く PCR検査して、陽性なら隔離して治療、陰性なら規制なしとするのが一般的です。

しかし我が国はかつて MERSや SARSなどの感染症を経験しなかったため、大がかりなウイルス感染対策はとられないまま今日に至りました。つまり、 PCRはあってもこれをただちに使える人もシステムも、十分準備できていなかったのです。

そこで、やむなく早期にクラスターを見つけ、これを丁寧に潰していくという方針をとることにしました。実際この方法はかなりの効果をあげ、感染率、死亡者数を抑えるのに威力を発揮したようにおもわれます。

ただ、感染が収束に向かっている現在においては、次に襲来する感染爆発にどう備えるかが主要テーマになっています。

そこで喫緊の問題は、疲弊した経済活動をはやく活性化することでしょう。

そのためには、社会活動できる人と自宅待機すべき人を分別しなければなりません。

新型コロナの厄介な一面として、無症状の感染者(本人は健康と思っている)がしばしば他人に感染するため、症状のないひとにも積極的に PCR検査をしていかないと、未然に予防できないということがあります。

しかしその結果、陰性が判明したひとには、社会活動に復帰してもらえばいいのです。

ただ、ここで問題があります。

それは PCR検査の信頼性についてです。当然ですが、患者さんのコロナウイルス量が少なければ PCR検査しても陽性にはなりにくいし、ウイルス量が多ければ問題なく陽性になります。

じつは、感染して 8日目(症状が出て 3日目)頃が一番ウイルスの量が増えており、この時期に検査すればかなり正確に陽性と判定できるのですが、時期を外れるとウイルス量が減ってしまうため、陰性と判定されてしまうのは仕方ないのです。

おおまかに言って、 PCRの感度は 70%程度といわれますが、検査時期によって正診率に随分差の出ることが分かります。さらに、粘液採取が不完全であったり、PCR検査の操作ミスも取りざたされており、症状が続くようなら、たとえ陰性でも後日もう一度検査して確認しておくのが安全と思います。

  今後、抗体検査はどうするか

一方、新型コロナに対して抗体検査が有用であることは論を待ちません。

社会にどれだけ新型コロナが広がっているか、つまり新型コロナに抵抗力をもったひとがどのくらいいるかが分かるのです。ちなみに、6割のひとが抗体をもてば、その社会には集団免疫ができ、新型コロナを克服できるといわれています。

ところで抗体が陽性の場合、 2度と感染しないとまでは言えませんが、一般的には再感染するリスクは低く、他人に感染させるリスクも低いものと考えられています。

ですから、とくに医療関係者や介護施設、幼稚園など、病人、高齢者、幼児などを相手とする人たちや、電気・ガス・輸送など社会インフラを支えている人たちは、積極的に抗体検査をうけ、抗体が陽性なら安心して仕事に従事してもらいたいと思います。

一方、抗体のないかたは、感染に対する十分な予防策を講じて、仕事に従事すべきでしょう。

また、なんとなく社会活動を自粛している方々は、抗体が陽性と判明すれば、通常の日常生活に戻してもよいと思われます。

ただ現状を申し上げると、抗体検査キットそのものに、かなり問題点が多いのです。

というのは、検査キットはすでに 100種類ほどが発売されていますが、十分にデータの信用できないものが多く、信頼できるキットが市場に出るには、もうしばらく時間がかかりそうです。