COVID 19

新型コロナウイルス

(24)新型コロナ“第7波”  いよいよ収束の気配

第7波はこのまま収束するか?

今春の第6波のあと、オミクロン株の亜型BA.2がBA.5に置き換わり、7月に入って第7波が爆発的に拡大してしまいました。この9月に入ってやっと、第7波も収束の気配がみられるようになりました。

当然ですが、コロナに感染したひとが増えれば増えるほど、またワクチンが行き渡るほど、コロナの抗体を持ったひとが増えるわけで、そうなるとコロナの感染も下火になると予想されるのです。

実際、第7波の感染者が今までなかったほど多数に上ったためと、ワクチンの普及もあって、急速に収束が見えてきたのだと思われます。

ただ、厄介なことに、いったん獲得した免疫は時間とともに徐々に減ってきます。冬に向かって窓を開けるなどの換気がしにくくなると、再びコロナウイルスが暴れ始める可能性があります。あわせて、今年の冬はインフルエンザウイルスが久しぶりに暴れそうな気配があります。

今後ともマスクをし3密を避けることが、大切な予防法であることに変わりはありません。

重症が少ないのに死亡者が多い理由

第7波になって重症者は減ったのに、死亡者が増えているのはなぜかと聞かれることがあります。

そもそも重症者とは、意識がもうろうとして呼吸困難に陥り、ICUに運ばれ体外式人工呼吸装置を装着するひとをいいます。これは第6波では、コロナウイルスが喉から肺のなかまで侵入し肺炎をおこすため、呼吸困難になり人工呼吸装置が必要になっていたのです。つまり、重症とは肺炎による重症者を念頭においていたのです。

ところが第7波では、ウイルスはのどに留まることが多く、肺の中までいかないので、肺炎になることが少なく、呼吸困難にはなりにくいのです。したがって重症者は少なくなっています。

その一方で、第7波では心臓、腎臓、肝臓病あるいは糖尿病、癌などで体力の落ちた人が感染すると、一挙に体力を消耗してしまうことが分かっています。このため、呼吸困難などの重症化を経ないで急死してしまうケースが後を絶たないのです。

つまり、軽症だと安心していると突然、意識がなくなり死に至ることがあるのです。従来いわれている重症者は少ないのに、死者数が多いというのはこのためです。

全数把握か定点把握か?

第7波の感染爆発で、感染者の全数把握は医療機関や保健所に負担をかけすぎるという声が大きくなったことを受け、政府は医療機関に対し、症状やワクチンの接種歴など詳しい報告を求める対象を、重症化リスクの高い人に絞るという方向で調整をしています。

一方、一定の医療機関のみに定期的な報告を求める定点把握については、全数把握のような負担は大幅に軽減されますが、重症化リスクのある患者の拾い上げが困難になる、数理モデルなどを活用した流行状況の予測がしにくくなるなどの問題が起こってきます。

政府はいったん第7波が収まった後で、この問題を検討するとしています。

ちなみに現在行われている季節性インフルエンザの定点把握は、都道府県が指定した5000か所の医療機関を“定点”として、週ごとに患者数を集計し、定点となった医療機関の患者数をみながら、流行状況を把握しようとしています。

コロナ新ワクチンの接種始まる

新型コロナのオミクロン株に対する新しいワクチンの接種が、9月20日より始まりました。従来株とオミクロン株BA・1の両方に対応した成分を含む、2価ワクチンです。

現在の主流であるオミクロン株BA・5に対応したワクチンではないと、がっかりされそうですが、BA・1の働きを抑える中和抗体がBA・5にも効果を示すことが分かっているのです。

政府は年末にかけ、さらに新しいコロナウイルスとインフルエンザウイルスが感染爆発をおこす可能性を危惧し、年末までに国民全員に、このインフルエンザワクチンと2価ワクチンの接種を求めていく予定です。

まず最初は、4回目接種がまだの60歳以上のかた、基礎疾患がある18歳以上のかた、医療従事者などから始めるとしています。

ワクチン接種の間隔は5か月とされていますが、近くもう少し短くなる可能性があります。

また、BA・5に対応した成分を含む2価ワクチンは、すでにアメリカで造られ、緊急使用許可がおりているそうですが、まだ動物実験のデータしかないため、厚労省が慎重に審査を進めている最中です。

子供にワクチンを接種すべきか?

コロナ第7波では子どもの感染も急増し、かつてのピークの2倍以上となりましたが、それまでと比べのどの痛みや咳、発熱の子どもが増え、とくに脱水症状や熱性ケイレンで救急搬送され重症化するケースが目立っています。

また治ったあとに、せきや息苦しさなどの後遺症も増加していますし、心臓や肺などに病気がある子どもでは重症になるリスクが高い傾向にあります。子どもは重症化しにくいとか、基礎疾患がなければ大丈夫と言える状況では決してありません。

今までは、子供の場合、ワクチンをうっている症例が少ないため、予防効果や副反応がどの程度か十分、分かっていなかったのです。このため、感染しても重症化しにくいのだから様子を見てもいいとする傾向がありました。

しかしその後、国内の安全性データが集積された結果、ワクチンにより、12~17歳における副反応の発生は若年成人と変わらないこと、5~11歳においてはむしろ軽い傾向が確認されました。

我が国の副反応についてみてみますと、注射部位の痛み、頭痛、倦怠感、筋肉痛、寒気、発熱などがみられますが、いずれも数日で消失しています。

また外国では、接種後、心筋炎をおこすことが話題になりましたが、我が国では、5歳から11歳児におよそ53万回、ワクチンを打ちましたが、「心筋炎」の症状が出た子どもは1人だけでした。

また、肝心のワクチン予防効果についても、我が国での子供たちにおける重症化の予防効果は40~80%もあることが確認されたのです。

これをうけ日本小児科学会は、5~17歳のすべての小児に、重症化を予防するためワクチン接種をしたほうがいいと、声明を出しました。

厚労省もこうした議論を踏まえ、9月6日から、小児(5~11歳)に対して、3回のワクチン接種とも、努力義務が適用されることになりました。

ただ、接種は強制でないため、本人および保護者の判断に任せられることに変わりはありません。

なぜ薬が手に入らないのか?

新型コロナ用として開発された薬は現在4種類あり、現在国内で承認されている、軽症の段階から使える飲み薬は、「ラゲブリオ」と、「パキロビッドパック」の2種類です。

ラゲブリオ(一般名モルヌピラビル)は、現在160万人分の備蓄がありますが、2022年8月時点で28万人分が使用されています。

重症化リスクがあるかたの死亡リスクをおよそ30%低下させる効果があるとされます。

一方、パキロビッドパック(一般名ニルマトレルビル・リトナビル)は現在200万人分の備蓄がありますが、2022年8月時点で使用されたのはわずか2万人分(1%)にすぎません。

一緒に飲めない薬が40種類もあることや、腎臓の悪いかたには用量の調整が必要となるからです。

発症から3日以内に投与を始めた場合には死亡のリスクが89%低下するそうです。

対象者は高齢者、癌治療中、免疫不全、肺・腎臓・心臓病、糖尿病のかたです。とくに重症化が懸念される軽症から中等症のかたは、感染して5日以内に治療を始めるかどうかが、キーポイントとなります。妊婦については胎児への影響が心配され、対象外となっています。

ところが、実際病院にいっても、薬を処方してもらえないという声をよく聞きます。

その理由は薬剤が高価(約20万円)なために国に備蓄が十分でなく、安定供給ができないため、小出しにしかできないのです。

以上の薬は高齢者や重症化リスクの高いかたが対象でしたが、重症化リスクがなくても軽症の段階で服用できる飲み薬として、塩野義製薬が開発中の「ゾコーバ」が国の承認を待っている状態です。

以前から期待の大きい薬剤ですが、国はまだ有効とは言い切れないとして、承認の許可を出せないでいます。今秋改めて審査が行われる見通しになっています。

経口剤とは別に注射・点滴薬として、軽症者用に使える抗体医薬「ロナプリーブ」と「ソトロビマブ」が、2021年、特例承認されました。当初は死亡リスクが70%も下げられるというので盛んに使われましたが、オミクロン株が感染の主流になってからは、治療効果が急速に低下してしまいました。

したがって、今はあまり使用されておりません。