COVID 19

新型コロナウイルス

(15) なぜ山梨県はコロナが少ないか?


年が明けて、東京中心に神奈川、千葉、埼玉など関東各県では、100名を超えるコロナ感染者が頻出している状況です。その中で独り山梨だけは一貫してほぼ10名以下と極端に少ないことが、世間の衆目を集めていました。

首都圏に直結した山梨県になぜ感染者が少ないのか。いったい山梨県はどういう対策をとってきたのでしょうか。

その肝となっているのが、『やまなしグリーン・ゾーン認証制度』です。対象となる宿泊業、飲食業、ワイナリー、酒蔵で、若干内容は異なりますが、大筋はつぎの5つのステップに要約されます。

 

ステップ1「施設の対策」

十分な換気設備を設置する。設備がない場合は30分に1回、5分程度、2方向の窓、ドアを全開にするなど、定期的に換気を行う。

不特定多数の人が接触する場所(テーブル、椅子の背もたれ、ドアノブ、電気のスイッチ、電話、蛇口、手すり、エレベーターのボタン、トイレの便座、洗浄レバー等)は 1 日 2 回清拭消毒する。

館内のゴミ箱は撤去し、入館者にゴミの持ち帰りを呼びかける。残されたゴミを片付ける際に、鼻水や唾液などが付いている可能性がある場合は、マスク、手袋を着用し、ビニール袋に密閉して捨てる。回収後は石けんで手を洗う。

トイレの衛生管理のため、蓋を閉めて汚物を流すよう張り紙で周知する。ハンドドライヤーは使用を停止する。

喫煙スペースを屋外に設置する。

 

ステップ2「客席の対策」(人と人との距離の確保)

最低1m(マスク着用のない場合は 2m)の距離を確保する。

近距離での会話や発声を避ける。

アクリル板などの遮蔽物を設置する。

1 室の入室者数を通常時定員の半数に制限する。

机(幅 180 ㎝×奥行 45 ㎝)を利用する場合は、1 台あたり 2 名の利用を限度とする。

 

ステップ3「お客様への対策」

利用者に対して入館時の体調確認を行い、入場者が、発熱、風邪症状、嘔吐・下痢等の症状がある場合は入館を断る。

来店時の手指消毒を実施し、検温など健康観察を実施する。

マスク着用を徹底する(飲食時を除く)。

来店者の名前と連絡先を記録する。

 

ステップ4「従業員への対策」

従業員は出勤前に検温・体調確認(発熱、風邪症状、嘔吐・下痢等の症状の有無)を行うとともに、業務開始前にも再度確認を行う。

従業員はマスクを必ず着用するとともに、入館者に対してもマスクの着用を周知する。

従業員は定期的に、利用者は入館時に、こまめに手指の消毒を実施する。(入口に消毒液を設置)

休憩スペースの換気を十分おこない、共用物品の消毒をこまめにおこなう。

 

ステップ5「保健所の調査等への協力」

感染者発生時や濃厚接触者の疫学調査、感染防止対策へ協力をお願いする。

 

こうして県の現地調査で認証を受けた施設には「グリーン・ゾーン認証施設」のステッカーを店頭に表示できるため、利用者はこれを手がかりに店を選べるというわけです。

また、このガイドラインを遵守すれば、施設は休業しなくていいことになっています。

たしかに詳細な内容ではありますが、なんら目新しいことは書かれていません。すでに1年前から、多くの識者が繰り返し提言してきた警告の範囲内です。

ただ山梨県は丁寧な枠組み作りをおこなって県民の自助努力を引き出し、感染防御に成功したということでしょう。

 

昨今やっと他の自治体にも、山梨モデルに追従しようとする動きがみられているようです。

一方、大都市では対象となる施設数が多すぎるので、真剣に取り組もうとしなかったのではという声もありますが、どうでしょうか。

ちなみに「グリーン・ゾーン認証」は山梨県が現地調査のうえ決定していますが、東京都の『レインボーステッカー』は施設側の宣言に依存しているだけで、効果は期待できません。

 

ところで、政府はこの期に及んでも公助を脇に置き、「さらに自助を」と言っていますが、これ以上の自助努力は無理という抗議の声もしばしば聞こえてきます。

周りを見渡すと、コロナウイルスの蔓延に対して、自己抑制するひとたちが大半ですが、どの国にも、高をくくって羽目を外す人達がいます。おそらく「さらに自助を」と言っているのは、この人たちに向けての提言ということでしょう。

政府・自治体は要請、指導、強制、罰則などの手を繰り出して、彼らを制御しようとしていますが、なかなか思うようにいかないようです。

なにしろ、民間人ならまだしも官僚、自治体職員にも、このところ抑制がからきし効いてませんから、政府は頭を抱えていることでしょう。

 

その一方で、ウイルスをもった無症状者の対策が遡上に上がっています。

彼らは無症状でありながら、他人に感染を広げる厄介な存在です。政府自治体はここにも焦点を当て、対策を練っているようですが、今のところ成果は挙がっていません。

我々が政府に公助を期待するひとつは、この隠れたウイルス感染者を発見し隔離してもらいたいということでしょう。そうしなければ、安心して市中へ出かけられないからです。

そのためには、やみくもにPCRをおこなっても、思った成果は望めません。

それより、感染源になりうる飲食店や病院、介護施設、学校、保育所などに的を絞って、変異型を含むPCR検査を実施していくのが妥当ではないでしょうか。

そして感染者を自宅管理とせず、可及的に施設や病院へ隔離してもらいたいと思います。ご承知のように、変異型ウイルスの家庭内感染リスクは、従来型に比し、比較にならぬほど高いと言われているからです。

 

ところで、間近に東京オリンピックを控え、6~7月中にはワクチンが国民全体に行きわたるだろうという予測が語られています。諸外国の発表によれば、ワクチンの効果は劇的といわれ、ワクチンさえ打ち終われば、今語られている懸案など胡散霧消してしまうだろうとの期待が高まります。

どうかそういう結末を迎えてほしいものだと、切に願ってやみません。