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胃の病気

脅威の萎縮性胃炎


胃酸や消化酵素を製造していた胃の粘膜が傷んで、だんだん薄くなる(火事の焼け跡のようになる)状態を萎縮性胃炎と呼びます。

胃の粘膜に棲みついたピロリ菌が発生するアンモニアや毒素、あるいはピロリ菌自身の免疫反応により萎縮性胃炎が発生するといわれています。

長年にわたりピロリ菌が棲みつき萎縮性胃炎がひどくなると、ついには胃の粘膜が腸のように変化する腸上皮化生という状態になり、そこに胃ガンが発生しやすくなります。

この場合の胃ガン発生率は100人に1人とかなり高率です。

しかし運のいいことに、萎縮性胃炎から発生するガンは、胃ガンのなかでは比較的悪性度が低く(高分化型のガンという)、はやく見つかれば内視鏡で取り除くことができます。

ところで胃粘膜の萎縮がすすむと、消化酵素であるペプシンの元になっているペプシノーゲンが胃のなかへ出なくなります。

ペプシノーゲンの一部は血液中にも出現するため、血液検査をすればペプシノーゲン出具合が分かるのです。

つまり、胃ガンの危険信号をしめす萎縮性胃炎を早めにキャッチするには、ペプシノーゲンの血液検査が有効であり、これをもって胃ガン検診をしようとする施設が増えています。

ただし、この検査でみつかる胃ガンは、ガンのうち高分化型のガンに限られており、より悪性といわれる未分化型ガンの発見には役立たないという欠点があります。

ピロリ菌を除菌することで、胃潰瘍や胃のただれが改善することは証明されていますが、萎縮性胃炎や腸上皮化生まで治すことはむつかしそうです。

したがって、すでに萎縮性胃炎や腸上皮化生があるかたは、除菌に成功したからといっても、胃ガンにならない保障はないのです。

年1回の定期検診は欠かさないようにご留意ください。