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子宮頸がんのワクチン接種をどうするか?

20 代から30 代の女性のがん死亡率の1位は子宮頸がんで、世間では「マザーキラー」といって恐れられています。子宮摘出術を受けると一生子供が産めなくなるからです。

我が国では年間1万人が子宮頸がんに罹患し、約3000人が死亡しているといわれます。
その原因は主に2種類のヒトパピローマウイルス(16型と18型)で、一般に性行為を介して感染します。

じつはヒトパピローマウイルスには100以上の種類があり、そのうち16型と18型以外にも少数ながら(15種類ほど)、子宮頸がんに関係しているウイルスが見つかっています。

子宮頸がんワクチンの登場

現在、16型と18型に対するワクチンは出来ており、世界130カ国以上で使用されています。このワクチンは、世界保健機関(WHO)で安全性と有効性が認められており、子宮頸癌の70%以上は防ぐことができると言われています。そこで我が国では2013年4月に中学1年生から高校1年生までを対象に定期接種がスタートしました

ところが、ワクチン接種2か月後に、全国各地で予想外の副反応が報告されました。

両手・足に力が入らなくなった(ギラン・バレー症候群)、頭痛、視力低下、痙攣、手足の麻痺、意識が混濁する(急性散在性脳脊髄炎)、わずかな刺激でも手足に激しい痛みがおこって動けない(複合性局所疼痛症候群)などです。

これらの副反応は10万回に1回しかおこらないといいますが、マスコミがこの衝撃的な副反応を大きくとり上げたため、国民のあいだに強い不信感が生まれました。

これをみて厚生労働省は、積極的には接種を勧めない方針に舵を切ったため、ワクチン接種率は一挙に70%から1%以下に減ってしまいました。

ワクチン接種をどう評価するか

しかし世界保健機関(WHO)の報告によれば、すでにワクチンを導入している欧米諸国では、導入後4年間で子宮頸部前がん病変の発生は半減しています。さらにフランスでの200万人の大規模調査報告から、問題とされるCRPS(複合性局所疼痛症候群)、POTS(体位性起立性頻拍症候群)、自己免疫疾患の発生率は,接種者と一般集団で差がないそうです。

それにもかかわらず日本はワクチン接種を中止したことで、子宮頸がんの死亡者が確実に増加してしまうといって、日本政府の対応を非難しました。

そこで我が国でも2015年9月、名古屋市が全国初の大規模な「子宮頸がん予防接種調査」をおこないましたが、案に相違して、ワクチン接種者と一般集団に差は認められませんでした。

したがって、これがワクチンの副反応であるとする科学的な証明はできていません。しかし逆にこれを心の問題として結論づけていいかとなると、いまだ不安が残ります。

現在、厚労省専門部会ではワクチンの成分に問題があるのではなく、注射の痛みや不安によって症状が出現したのではないかとみているようです。しかも各国の疫学調査では、これらの症状は未接種の人にも同程度にみられることから、ワクチンは無関係とする国々が大勢を占めているのです。

ワクチン接種の功罪

我が国がこのままワクチンを実施しなければ、年間3000人におよぶ子宮頸がんの犠牲者が出ることになります。そもそも副反応のないワクチンなど、この世に存在しないのです。ですから、副反応に怯えてワクチンを一切やめるというのは、決して賢明な選択とはいえません。

先年、インフルエンザの治療薬「タミフル」を飲んだ若年者が、無意識のまま2階から飛び降りるという事故が続きました。因果関係は不明ですが十分な治療効果があるため、保護者が付き添うという条件で、今も「タミフル」は医療機関で処方されています。

これを参考に、ワクチン問題にも対応していくべきではないでしょうか。

副反応が疑われる症状の治療に尽力することは当然ですが、副反応についてさらに詳細な調査をおこない、その結果を踏まえて、国が早急に結論を出さなければならない問題でしょう。