近年、ガンを攻撃する遺伝子を体内に注入し、その遺伝子の働きでガンを抑制しようという、いわゆる「ガン遺伝子治療」が注目を集めています。
病気の本態に迫る画期的な治療法であり、今までの手術、放射線療法、化学療法、免疫療法に次ぐ、第五の治療法といえます。
遺伝子を体内に導入する方法は2つあり、1つ目は、
です。
その代表が免疫遺伝子療法で、がん組織中にあるTリンパ球を取り出し、これにIL2やTNFというサイトカイン遺伝子を導入して、リンパ球の抗ガン作用を強化し、大量に培養したのち体内に戻し、がん病巣を集中攻撃しようとするものです。
またガン細胞の一部を取り出し、サイトカインなどの遺伝子を導入して免疫力を高めた後、放射線で能力をなくしてから体内に戻す方法もあります。
この場合、ガンに対する特異的な免疫が生じ、ガンを縮小・消失させるというものです。
2つ目は、
です。
まずベクター(運び屋)を用いてガン細胞に自殺遺伝子を感染させ、その後、体内で自殺遺伝子の産物に代謝させて強い毒性をもたせたのち、ガン細胞を自殺に追い込む方法があります。
また、ガン細胞を破壊するアンチセンス遺伝子(遺伝子配列を逆向きに発現させる)を直接ガン細胞に導入したり、ガン細胞の自殺を促すp53遺伝子を直接体内に打ち込む治療が試みられています。
残念ながら、現在のところ成功例はまだ少数にとどまっています。
これは治療用遺伝子を患者体内に入れ、きちんと働かせるのが予想以上に難しいことを示しています。
遺伝子がうまく入らなかったり、入ってもきちんとタンパク質が作られなかったりするからです。
しかし、今後、技術開発が進めば、大いに期待できる治療法と考えられます。