現在行われている癌治療には5つの方法があります。
癌が発生したところに留まって、ほかの臓器に転移していないうちは、手術によって癌の部分だけを切り取ればいいのです。
さらに癌が初期で、血管やリンパ管に広がっていない場合は、内視鏡などをつかって、からだにメスを入れずに癌を切り取ることができるようになりました。
しかし癌が広がり、手術ではとりきれない場合には、第2番目の化学療法や第3番目の放射線治療が選択されるようになります。
外科手術の前後や放射線治療の前後に、癌の転移が予測される場合の補助療法として用いられます。
さらに全身的な癌である白血病の治療にも使用されます。
化学療法剤には癌細胞の分裂をストップさせるものや、癌が増殖するのに必要な蛋白の合成を阻止するものなどがありますが、骨髄への悪影響や脱毛、嘔吐・食欲不振など副作用も多いため、数種類を組み合わせて副作用を抑えながら、抗癌剤の効果を高める多剤併用療法がおこなわれています。
とくに最近では、癌細胞だけを標的にしてまわりの細胞を傷つけない分子標的治療薬が開発されつつあります。
癌が比較的初期の状態であれば、完全治癒が期待できます。
しかし癌が進行し治療困難な状態になっても、腫瘍縮小効果により症状を和らげてあげることができます。
X線やγ線などの強力な電磁波は癌細胞を死滅させますが、あくまで局所的な癌治療と考えなければなりません。
放射線療法は被曝するわけですから、もともと人体には有害なものです。
つまり放射線は癌部分だけでなく、周囲の正常なところにも傷害を負わせるため、DNAの傷害や白血球の減少、貧血などをおこす危険をはらんでいるのです。
これらの弱点を補うために、癌細胞だけをピンポイント攻撃するための「定位放射線照射」や「強度変調放射線治療」(IMRT)がおこなわれるようになり、それと並行して「重粒子線治療」も徐々に広がりを見せています。
つぎに
これは今までの治療法が癌そのものを標的にしているのに対し、逆にからだの免疫力を高めて癌に立ち向かおうという方法です。
体外で樹状細胞に癌の特徴を覚え込ませたのち、本人の体内にもどしてキラーT細胞に癌を狙い撃ちさせようという樹上細胞ワクチン療法や、癌ペプチドを用いたワクチン療法が試みられています。
これは人工的に癌ペプチドを作製し、これをワクチンとして注射して大量のキラーT細胞を増産させ、癌細胞を攻撃する治療法です。
さらに近年、
これはガンを攻撃する遺伝子を体内に注入し、その遺伝子の働きでガンを抑制しようという治療法です。
具体的には、体外で癌組織のTリンパ球にサイトカイン遺伝子を導入して体内に戻す方法と、自殺遺伝子を感染させ癌細胞を自殺させるか、癌細胞を破壊するアンチセンス遺伝子やp53遺伝子を注入する方法です。
しかし現在、まだ研究途上にあり、遺伝子を挿入しても未だ治療効果が上がっている状況とは言えません。