核燃料サイクルの論理
原子力発電所(軽水炉)で使われた使用済み核燃料(核燃料の燃えかす)から、プルトニウムやウランを取り出し(再処理という)、これを高速増殖炉で再び燃料として使う仕組みを「核燃料サイクル」と呼びます。
燃えるウランとは核分裂するウラン235のことで、燃えないウランとはウラン238を指しています。原子力発電(軽水炉)ではウラン235を燃やしますが、原子炉の中で燃えないはずのウラン238も、中性子を吸収するとウランより燃えやすいプルトニウム239に変わります。
このプルトニウムを高速増殖炉に入れて燃やしながら、プルトニウム燃料の周囲に燃えないウラン238を入れておきます。
するとプルトニウムが燃える一方で、ウラン238が新たにプルトニウムに変わって行き、燃えたプルトニウムより多くのプルトニウムが生まれます。
これを取り出し再利用すれば、無限のエネルギーが生み出せる、というのが「核燃料サイクル」の論理です。
絵に描いた餅
資源のない我が国では核燃料サイクルの実現に活路を見出そうとして、1985年、高速増殖炉もんじゅの建設が始まりました。ところが不運にも炉心を冷やす液体ナトリウムが漏れる事故(メルトダウンがおこりきわめて危険)が起こったため工事は中断し、「核燃料サイクル」は絵に描いた餅になってしまいました。
そのため、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、ウランとの混合燃料(MOX燃料)を軽水炉で燃やすプルサーマル計画(「プル」はプルトニウム、「サーマル」は熱中性子炉(軽水炉)の略)が立ち上がってきました。
しかしプルサーマルでは、軽水炉で制御棒の効きが悪くなったり、出力が不安定になる懸念があり、もし事故が起こると汚染範囲は4~5倍に広がるといわれています。
また、プルトニウムは吸い込むと1gで約50万人に肺ガンが発生するというほどの猛毒です。
懸念される安全性の確保
プルサーマル計画が実施されると、核兵器の材料でもある猛毒のプルトニウムが国中を移動することになり、安全性が確保できるかどうか不安がつのります。
また現在、使用済み核燃料としては、大量のウラン(2万トン前後)とプルトニウム(40トン以上)が残っており、これを全国の原発敷地内に貯蔵しています。
それを青森県六ケ所村の再処理工場で、抽出しようとしていますが、処理能力(年間ウラン800トン)が追い付いていません。
また再処理で生まれる高レベル放射性廃液は、ガラスと混ぜてステンレスの容器に詰めて地下深くに埋める予定ですが、その候補地選びも難航している状況です。
このため政府は、使用済み核燃料を再処理と直接処分の併存で切り抜けようとする方針に転換しつつあるようです。