おもに11月から3月にかけ、嘔吐と下痢、腹痛を起こすウイルスです。カキなどの二枚貝(ウィルスで汚染された海水を取り込み、濃縮している)やサラダを、生あるいは十分に加熱調理しないで食べると、ヒトの小腸で繁殖し1~2日して急性胃腸炎をおこしてきます。熱は37~38℃くらいで高熱は出ません。
ノロウイルスは消毒薬にも熱にも酸にも強く、感染力も強いため、しばしば集団感染を引き起こします。
発症後1週間は糞便や吐物に大量のウィルスを排出します。このため食品以外にも、ウイルスの付着した便器や吐物の付いた床などからウイルスが飛散し、これを吸った人へも感染していきます。
また、患者さんの便に含まれているウイルスが用便の際、患者さんの手からドアのノブや水道の蛇口に付着し、それを触れた人へ感染していくことも考えられます。
ノロウイルスの診断には便を用いた簡便な抗原検査用キットがあり、15分で結果が得られますが、データはやや不正確です。正確には患者の便や吐物を用いた電子顕微鏡法やリアルタイムPCR法などが用いられますが、現在のところ研究所や行政機関でしか扱っておりません。
有効な抗ウイルス剤のないノロウイルス
残念ながらノロウイルスに有効な抗ウイルス剤はありません。しかし普通は安静にし、電解質の補給(スポーツドリンクなど)と糖分主体の栄養補給をすれば2日程度で治ってしまいます。
ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では命にかかわることもありますから、脱水症状があれば病院で輸液をしてもらう必要があります。
便や吐物の処理は素手でなく使い捨て手袋を使用し、汚物をビニール袋に入れてください。残った部分は50倍~100倍に薄めた塩素系漂白剤をつけたペーパータオルで拭きとってください。
予防法としては、調理前や食事の前、トイレの後には石鹸でしっかり手を洗ってください。
また 調理器具は十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウムで浸すように拭いてください。まな板・包丁・食器・タオル等は85℃以上の熱湯で1分以上加熱すれば大丈夫です。