最近、6時間も休まず走り続けるスーパーマウスが誕生したというニュースが話題になりました。
米国、ケース・ウエスタン・リザーブ大学の研究チームの発表です。
チームは「人間に応用する考えはない」としていますが、その驚異的な体力の秘密が解明されれば、競馬界にも大旋風が巻き起こりそうですし、人にも応用しようとする動きがおこるのは、十分予測できます。
テレビで紹介されたスーパーマウスはその表情までは分かりませんが、6時間も黙々と走り続け、最後までペースダウンしたふうもありません。
実に驚異的な体力で、そのエネルギー源が注目されるところです。
研究チームによれば、遺伝子組み換え技術を使って、ある酵素をマウスの骨格筋に過剰に発生させる実験を繰り返したところ、スーパーマウスが生まれたそうです。
ある酵素
注目の酵素は肝臓・腎臓での糖新生や脂肪組織におけるグリセロール合成に関するホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼという酵素です。
これを筋肉内に大量発生させると、エネルギー源として脂肪酸が実に効率よく使われるようになるそうです。
脂肪酸は筋肉のエンジンといわれるクエン酸サイクルに乗って、糖分やグリコーゲンとは比較にならない多量のATPを産み出すことが特徴です。
しかもスーパーマウスでは骨格筋のミトコンドリアが増加しているそうです。
スーパーマウスのミトコンドリア
ミトコンドリアはクエン酸回路の行われている場所ですから、脂肪酸を中心としたエネルギー代謝が予想以上に円滑におこなわれているものと予想されます。
さらにこのマウスはエネルギー源としてグリコーゲンでなく脂肪酸を主に使うため、激しい運動で蓄積される乳酸が極端に少なく、長時間の運動にも疲れを感じにくく、持ちこたえることができるのではといわれています。
スーパーマウスは、野生のマウスよりも60%多く食物を摂取しますが、見かけは意外に痩せています。
これは骨格筋の筋肉線維が細いためで、酸素をとりこみやすくして長時間の運動に適応しやすくしているのです。
また、寿命も生殖期間も普通のマウスより明らかに長くなっているそうです。
通常、激しい運動を繰り返すと、ミトコンドリアで消費される酸素の一部が活性酸素に変わり、老化が促進されるといわれていますから、ここではそれを上回る老化防御機構が働いているようにおもわれます。
現在研究チームでは、このスーパープレイの生化学的メカニズムの解明に向けて検討中とのことです。