渡り鳥のオオソリハシシギのメスは、アラスカからニュージーランドまで、11,680キロを不眠不休で羽ばたき続けた大記録を持っています。同様に、マグロや鯨が何時間も休みなく遊泳できるのも驚異の現象でした。
最近そのパワーの源がイミダゾールジペプチドというアミノ酸結合体であることが判明し、疲労回復物質として話題を呼んでいます。
イミダゾールジペプチドとはヒスチジンとβ-アラニンの2つのアミノ酸が結合した「カルノシン」と「アンセリン」をいいます。
イミダゾールペプチドの中でも、人間や豚、牛、馬などはカルノシンが多く、まぐろなどの大型回遊魚になるとアンセリンの方が多くなります。
ヒトへの効果
このイミダゾールジペプチドをヒトが摂取すると、血液中でアミノ酸に分解され、酸素消費が激しい骨格筋、心筋、神経組織、脳などへ運ばれ、「カルノシン」に再合成されます。そこで強力な抗酸化作用を発揮して、発生する活性酸素から筋肉や脳の細胞を守ります。
また、糖の酸化やタンパク質の変性を抑制する働きをもつことが確認されています。さらに、激しい運動をしたときには、プリン体が分解して尿酸が発生するのを抑制し、もう一度プリン体に戻す働きを促します。これらの理由により、いつまでも疲れを感じずに動き続けられるのではないかと考えられています。
筋肉中にカルノシンを多くもつ馬は、走り出すと同時に、トップスピードを維持できるといわれ、まぐろやかつおが時速100kmで泳ぎつづけられるのも、渡り鳥が羽ばたき続けられるのも、カルノシンやアンセリンというイミダゾールジペプチドの働きによるといわれています。
イミダゾールジペプチドは、鳥の胸肉や回遊魚の尾びれに多く含まれるため、これらを重労働の前に食べておくと疲労しにくく、重労働のあとに摂取しても疲労の回復が早まるといわれています。
そのほか 疲労回復に有効な栄養素には次のようなものがあります。
摂った糖質をエネルギーに変えるのに不可欠です。精神疲労を和らげる効果もあります。
うなぎ、豚肉、鯛、ぶり、大豆、玄米、など
アリシンはビタミンB1の吸収を良くし、スコルジニンは強壮、解毒、疲労回復に効果がある有機イオウ化合物です。
ニンニクにたっぷり含まれています。
からだに吸収されてビタミンAになります。有害な活性酸素から体を守る抗酸化作用や、免疫を増強する働きがあることがわかってきています。
にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃ、かんきつ類、スイカなど。
ベータカロチンと同種のカロチノイドで、βカロチンの2倍、ビタミンEの100倍の強い抗酸化能力があります。活性酸素を取り除き、疲労を取り除きます。
トマト、スイカ、柿、ピンクグレープフルーツ、グアバなど。
抗酸化作用で免疫力を高め、糖分やクエン酸も豊富で疲労回復に効果的。
イチゴ、カボチャ、ホウレン草など。
抗酸化作用が強く、免疫力を高めます。
カボチャ、ホウレン草、ウナギ、アーモンドなど
アミノ酸でなくビタミンの1種で、肝臓、腎臓など内臓の疲労回復に効果的です。
サザエ、ホタテ、アサリ、まぐろ、さば、イカ、タコ、エビなど。
クエン酸回路を活性化し乳酸をエネルギーとして利用して疲労を低減します。
お酢、黒酢レモンやオレンジ、グレープフルーツ、梅干しなど
筋肉のエネルギーになり筋肉疲労の予防と回復を促進します。精神的な疲労にも効果があります。
大豆・チーズ・マグロの赤身など
脳や脊髄に存在するアミノ酸の一種で、脳の中では興奮を押さえて精神安定作用を示しながら、“脳を癒してくれる物質”として評価されています。
発芽玄米に含まれます。
体内のエネルギー産生を高め、抗酸化作用が強く、アンチエイジング(抗老化作用)で知られています。
イワシ、サバ、豚肉、牛肉など
筋肉を収縮させる働きがあり、不足すると脱力感・倦怠感が発生します。
発芽米、ヒジキ、アボカドなど
大豆のタンパク質は必須アミノ酸、ビタミンB、カルシウム、食物繊維を豊富に含み消化吸収を活発に、整腸作用を示します。
納豆、豆腐、おからなど
強力な抗酸化作用があり、ブドウ糖をすばやくエネルギーに変える働きを持っています。
じゃがいも,ほうれん草,ブロッコリー,レバーなど
ゴマに含まれるリグナンの一種で、抗酸化作用が強く、活性酸素を減らす役割があります。
さらにゴマにはビタミンE、カルシウムが多く含まれ、疲労回復や精神安定に効果的です。
造血に不可欠です。
海藻(ひじき、わかめ、こんぶ)マグロの赤身、カツオ、ウナギ、レバー、カキ、しじみ、いわし、ネギ、ニラ、ホウレンソウなど
食べたものが代謝されエネルギーに変換されるときに必要
アーモンド、カツオ、大豆、アズキなど
細胞を強化し、免疫力を高めます。
カキ、牛肉、牛乳など