近年、マイナスイオンを発するというエアコン・加湿器・掃除機・ヘアドライアー・枕・炭・化粧品などなど、マイナスイオンは引っ張りだこの感があります。
しかし、そもそもマイナスイオンなどという科学用語はありません。
マイナスの電気を帯びた酸素と空気中の微小な水が結合した“負の電気を帯びた水の粒子を”マイナスイオン水“と言っているようですが、どうも存在そのものが眉唾ものなのです。
化学では、「塩素は電子1個が増えて陰イオンになり、ナトリウムは電子1個を放出して陽イオンになる」といいます。実はこの陰イオンとマイナスイオンとは全く別物なのです。
つまり陽イオン、陰イオンは液体中、固体中での概念なのですが、マイナスイオンは空気中に存在するとされます。
すなわちマイナスイオンは海岸や森の滝壺や噴水近くの水が飛び散るところに多く発生すると信じられています。
水が風であおられ飛び散るときにマイナスの電荷を帯びた水滴ができるというのです。
人工的にはトルマリン(電極石)やセラミックなどを水につけておくと、電気分解を起こして水の分子が100分の1まで小さくなり、マイナスイオンが発生するのだそうです。
エスカレートする宣伝
そしてそれは微小なため、からだに吸収されやすく、「ストレスを緩和していやし効果がある」、「集中力がつく」「髪がしっとりする」「アレルギーを予防する」「除菌できる」「防臭効果がある」「アトピーによい」「熟睡できる」、そしてついには「からだに有害な物質を消滅させる」などなど信じられないような効果が宣伝されています。
しかし考えてみれば、陽イオンと陰イオンの数はかならず同数存在するはずです。企業の宣伝のように、ある処だけにマイナスイオンが満ち溢れているなどということはありえませんし、イオンが空気中を漂うということも考えられません。
また、どのようにしてマイナスイオンを測定しているのかといえば、一定の電位を与えて電極の電位の降下速度を測るというもので、信頼性はいまひとつです。
夏、滝や噴水のそばで水の微粒子がからだに降り注ぐと、ひんやりして、すっきり感が出るのはうなずけます。
ただし、そこにマイナスイオンを感じるのは、ほとんど気分の問題というのが真相のようです。
結局、マイナスイオン水なるものは実在しないのではないかと言わざるを得ません。