近年、温泉ブームにより各地に温泉施設が設立させるようになりました。
多くは衛生管理が行き届いていますが、人手不足や経営悪化などにより、時には衛生管理が不十分になることが考えられます。
レジオネラ感染症の多くはこのように不衛生な循環式浴槽設備で発生しています。
今から12年前、家庭用の保温循環式浴槽(いわゆる24時間風呂)にレジオネラ菌が繁殖して集団感染する危険が判明し、国が業界に改善命令を出したのが衆目を集めるきっかけとなりました。
レジオネラはもともと土壌や川などに生息していますが、ほこりなどと一緒にレジオネラが体に付着したまま入浴すると、浴槽のなかで数十日生き続けるといわれています。
最近の温泉施設は循環式の浴槽設備が多いため、大勢に利用される大浴場のなかはレジオネラの繁殖する危険に満ちているといえましょう。
レジオネラにはエアロゾル(目に見えないほど細かい水滴)を吸い込むことで感染します。
つまり、ジャグジーや打たせ湯・温水シャワーなどから出るエアロゾルが感染源となります。
症状
吸い込んだレジオネラは肺で繁殖し、3日以内に悪寒と高熱で発病します。
風邪程度で直る場合と肺炎をおこし重症になる場合があり、肺炎をおこすと健忘症・幻覚・昏睡・記憶力低下などがみられるのが特徴です。
死亡率は50%以上と決して低くありません。
ただし元気なひとには感染することはありません。
体力のない幼児や高齢者、あるいは免疫力の低下した術後患者さんなどが罹るようです。
このため、各自治体では条例などにより、衛生指導・管理につとめています。
すなわち、頻回に風呂の水を入れ替えること、水槽やフィルターを定期的に清掃し、塩素系薬剤により遊離残留塩素を0.2~0.4mg/Lに保つこと、貯湯槽内の湯の温度は60℃以上(5分間で殺菌される)としてレジオネラが繁殖しないようにしています。
ただ最近省エネの気運が高まり、各施設で給湯温度を下げる傾向にあることから、レジオネラ感染症の発生が懸念されています。