現在、世界のエイズ患者数は5000万人を超え、我が国でも公称は1万人ですがおそらく数万人にのぼるといわれています。
米国では、80万人以上がHIVに感染していると推定され、毎年4万人づつ増えています。
最もエイズに汚染されているといわれるアフリカ南部の地域では、15?45歳の成人の30%以上が感染しているという報告もあります。
エイズ(AIDS)はAcquired Immune Deficiency Syndromeの略で、元来健康であった人がHIVというウイルスに感染し、免疫細胞が破壊される結果、免疫不全となって死に到る病気です。
エイズウイルスは一般名で、正確にはHuman Immunodeficiency Virus (HIV:ヒト免疫不全ウイルス)といいます。
1981年、アメリカの同性愛者に発見されたのが最初で、感染者は僅か10年間で100万人に激増しました。
ところでエイズウイルス(HIV)に感染すると、すぐエイズになるわけではありません。
5~10年を経たのち、エイズと呼ばれる病状をおこしてくるのです。
HIVに感染すると、1~2週間で微熱が出て体がだるく、風邪に似た状態になります。
しかしその風邪症状も1か月前後で収まってしまいます。
感染して数日間は急激にウイルスが増え風邪症状をおこしますが、直ちに抗体が作られ始めるため1か月ほどでウイルスが減少し、治ってしまうためです。
その後5~10年間は、HIVに感染しているとはとても思えないような無症状の期間を過ごします。
感染から5~10年後
これは体内でHIVが盛んに増殖する一方で、HIVを破壊する免疫担当細胞(ヘルパーT細胞)が同じくらい作られる結果、見かけ上HIVが消えたようになるためです。
しかし徐々に免疫担当細胞が作られなくなり、5~10年後この均衡が崩れると、免疫力の低下した症状が出始めます。
はじめは体重減少・全身倦怠感・下痢・発熱・めまい・発疹などがみられますが、エイズだけにみられる症状ではないところから、エイズ関連症状と呼びます。
さらに病状が進み、カンジダやサイトメガロウイルス感染症・結核・カリニ肺炎などの日和見感染をおこしたり、カポジ肉腫・脳症・痴呆症などの神経障害など重い病気にかかります。
これらの症状が出現した状態をエイズといいます。
感染ルート
エイズウイルスは感染者の血液・精液・腟分泌液に多く含まれ、感染ルートはセックス・血液感染・母子感染の3つに限定されます。
またエイズウイルスは唾液・尿・汗・涙にも含まれていますが、濃度が薄いため感染させるほどの力はありません。
セックスは最大の感染ルートになっており、感染原因の70~80%を占めています。
エイズウイルスを多く含んだ体液(精液・腟分泌液)が、相手の性器や肛門・口の粘膜に触れるか血管に入り込んで感染します。
血液感染とは麻薬常習者などにみられる注射器の回し打ちや医療従事者の針刺し事故などです。
直接血液中にウイルスが入るため、高率に感染します。
母子感染 は母親の胎盤を経る感染(胎内感染)、出産時の大量出血による感染(産道感染)、母乳による感染(母乳感染)があります。
エイズウイルスに感染した母親からは生まれてくる子の30%が感染するため、エイズに感染している子供の数は約200万人にのぼるといわれています。
感染したかどうかは、血液をとってHIV抗体検査を受ければ判明します。
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エイズを完治させる薬はありませんが、発症を抑える治療が積極的におこなわれています。
発症を抑える治療
HIV感染症の治療は「カクテル療法」と呼ばれる3つの異なるタイプの薬剤を併用し、エイズウイルスがヒトの免疫細胞に組み込まれるのを阻止したり、エイズウイルスの増殖を強力に抑え込み、薬剤の耐性を起こりにくくしています。
これによってHIV感染者のエイズ発病を遅らせ、延命をはかることが可能になりました。
意外な話ですが、エイズウイルス(HIV)は空気や水に触れれば死んでしまうほど弱いウイルスで、日常生活で感染することはありません。
したがって、空気感染はありませんし、皮膚の接触(握手・抱擁)でも感染しません。
ハシやコップなど食器の共用や洋式便座、日用品の接触でも感染せず、隔離の必要もありません。
また汗・唾液は濃度が薄いため感染しませんし(唾液の場合バケツ3杯分も必要)、プール・風呂の共用も問題ありません。
万一傷があって血液が出ても、体外では長く生きられないのです。
またHIVは加熱や、オキシフル、アルコールなどの普通の消毒薬で簡単に死んでしまいます。
ただし血液中に入ると猛威をふるうのですから、血液や体液を取り扱う医療従事者は、厳重にラテックス製の手袋、マスク、ゴーグルなどの防護用品を着用する必要があります。
エイズウイルス感染者とエイズ患者の用語の解釈はしばしば混乱されがちですが、 エイズウイルス感染者は感染していても無症状で普通に日常生活をおくっているひとをいいます。
一方、エイズ患者とは、免疫力が低下して全身倦怠感・食欲不振・下痢・発熱・めまい・発疹などに加え、日和見感染症やカポジ肉腫といった症状が出ている人のことをいいます。