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再生医療

乳歯バンク

乳歯
このたび、名古屋大学の上田実教授が中心になって、乳歯バンクが設立されました。

いままで学童の乳歯が生えかわる時期には、抜けた歯はそのまま捨てられていましたが、今後はこれを大事に保存しておこうというものです。

じつはこの歯の中心にある歯髄と呼ばれるゼりー状の部分には、将来骨や神経などの細胞に成長する幹細胞(万能細胞)が豊富に含まれていることが分かったのです。

幹細胞を使った再生医療は、すでに骨髄や臍帯血による幹細胞治療が知られており、最近では皮膚などの細胞から得られたIPS細胞による再生医療が注目を集めています。

しかし、いずれもまだ実用段階にあるとはいえません。

上田教授らは、歯髄に含まれる幹細胞(万能細胞)は骨髄のそれに比べ、密度が4倍も高く、増殖能力も優れていることに注目。

幹細胞から骨の細胞へ

人の乳歯から取り出した幹細胞を培養して骨の細胞をつくりだすことに成功したのです。

この結果をうけて、乳歯の持ち主は勿論、両親、祖父母までなら、この細胞を使って骨折など骨の治療に利用できるのではという期待感が高まっているのです。

今ただちに実用段階にあるとは言えませんが、近い将来、骨ばかりでなく脊髄損傷など神経の治療にも利用される日が来るものとおもわれます。

上田実教授は大学病院など6病院の協力を得て、数年で1万個程度の幹細胞を採取して培養し、超低温で保存して研究する目標を立てており、これらのデータを検討したのち、実用化を目指すとしています。

公共機関が乳歯バンクを開設するのは世界で初めてですが、麻酔などの特別な処置が要らず、簡単に集められるため、おそらく全国的に急速に広がっていくものと思われます。

すでにアメリカでは2006年、テキサス州オースティンの企業が、手数料7万円、年間保管料1万円という条件で乳歯バンクを立ち上げており、全国展開しているということです。