喜怒哀楽などの感情を引き起こす情報は、脳のニューロンという神経細胞で作られた化学物質(神経伝達物質)が、信号を発して隣の神経細胞へ送られることによって伝わります。
私たちは何らかの刺激を受けると、神経伝達物質がつくられて大脳辺縁系のなかにある扁桃体に送られ、好き嫌いの判断がされます。
ついでその結果が電気信号となってそばの視床下部に送られ、喜怒哀楽などの感情が生まれるのです。
生まれた感情はふたたび大脳皮質に取りこまれ、長期記憶などになります。
現在、分かっている神経伝達物質は50種類ほどですが、作用が解っているのは約20種類です。
情動に深く関係しているのは、γ-アミノ酪酸(略称 ギャバ)、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどです。
情動に深く関与する神経伝達物質
ドーパミンは快感、多幸感をもたらします。覚醒剤によく似た構造を持つので過剰に出ると幻覚・幻聴などの症状が出てきます。
このドーパミンを抑制するのがGABA(ギャバ)神経で、ドーパミンが出過ぎると、ドーパミンを細胞内に取りこんで、不安、恐怖を押さえます。
ノルアドレナリンは恐怖や驚愕に出くわすと分泌され、闘うか逃げるかいずれかの行動をとります。
そして長期間逃げられないストレスにさらされると、やがて無痛覚となり、ストレスから逃げるのを止めてしまいます。
ノルアドレナリンが出過ぎると躁状態となり、不足すると意欲が低下します。
セロトニンは落ち着きと安定感をもたらします。他の神経系に抑止的に働くた、め、興奮や抑うつ感を軽減します。
セロトニンが出過ぎると錯乱や発熱、発汗が起こりやすく、不足するとうつ病やてんかんを起こしやすくなります。
オピオイド(脳内麻薬様物質)は交感神経系の興奮によって、GABA神経から分泌されるエンケファリン、β-エンドルフィンなどを指します。
麻薬に似た幸福感、昂揚感をもたらしますが、出過ぎると精神活動や感情が麻痺して闘争も回避もしなくなります。