ネアンデルタール人と言葉
30万年前、ヨーロッパにネアンデルタール人が現れます。採集と狩猟で生活していました。
からだはのちのホモ・サピエンスよりも大柄で、体力も上回っていました。
極寒のなかを生きたため、氷河期のハンターと呼ばれていますが、地表がすべて氷に覆われていたというわけではありません。
彼らは動物の皮をなめして防寒用のコートを作り、狩猟用と動物解体用別々に石器を開発し、洞窟を住居とし、火を積極的に利用していました。
ただ、喉仏の位置が高く気道が狭かったため、母音が話しにくく、言葉を自由に操ることはできませんでした。会話ができないため、知力の発達も妨げられました。
ネアンデルタール人は一時は50万人にも達しましたが、4万年前北半球が最後の氷河期に入ると徐々にその数を減らし、2万5,000年前に絶滅の道をたどりました。
ホモサピエンスと言葉
ついで20万年前、ホモ・エレクトゥスから進化した、われらの祖先ホモサピエンスが登場します。長らくネアンデルタール人とともに生きていました。
ネアンデルタール人にくらべ、ホモサピエンスの喉仏は低かったため、言葉を自由に操ることができ、めざましい文明の進歩をたどりました。
2万~1万年前の氷河時代末期になると、もはや現代のわれわれと骨格は変わりが見られなくなります。
彼らは石器や金属器をもちいて植物を栽培し、動物を家畜化して食料源を確保しました。
このため、ホモサピエンスの人口は着実に増加していきましたが、爆発的に増加し始めたのはごく最近、産業革命が起こって以来です。
言葉とコミュニケーション
生産量が高まると同時にコミュニケーションが発達し、集団はますます巨大化の一途をたどりました。
現在地球上には、64億人もの人々が暮らすようになっています。
ネアンデルタール人が絶滅した理由は、ホモサピエンスにより駆逐されたというのではなさそうです。
彼らは言葉が未発達であったため、家族以外と共同生活をすることが困難で、大きなコミュニティーをつくることができませんでした。
このため、気候変動や災害に対処できず、集団を存続するための人口を維持できなかったものと考えられています。