4億5,000万年前、海は大量の生物であふれていました。
特に脊椎をもった最初の魚アランダスピス以来、つぎつぎに進化した魚類が登場してきました。
こうして海での生存競争は激化し、小型魚は駆逐され大型魚が生き残っていきました。
当時、板皮類といわれる鉄のような顎をもつ巨大魚(体長5メートル)が海を支配していましたが、そのうち海の酸素不足に対応できず、死滅の途を辿らざるをえませんでした。
地殻移動と超大陸
ところでこのころ、4~5億年ごとにおこっていた地殻移動による超大陸が誕生します。
地球内部のマントル対流が激化し、赤道直下にあった3個の大陸が移動し、挟まれた海は干上がって持ちあがり、ヒマラヤに匹敵する標高1万メートルのカレドニア山脈が形成されました。
当然そこには巨大な大河が生まれることになります。
われわれ人類の祖先につながる小型魚、ユーステノプテロンは、海のなかで大型魚に追われ、しだいに大陸に挟まれた大河へと避難していきます。
ところが、川には海と異なる過酷な条件が待ち構えていました。海と異なり川の水量は決して豊富とはいえません。
乾季になると川の水量は激減し、簡単に酸素不足をおこすようになりました。
魚は一斉に酸素欠乏に陥ってしまったのです。
食道の変化と肺魚
3億7,000万年前、この事態に対処するため、川にすむ魚の食道の一部が変化して大気中の酸素を呼吸できる肺魚が生まれました。
このなかから体長5メートルもある肉食肺魚ハイネリアが登場しました。
小型魚ユーステノプテロンにとっては恐るべき天敵です。
そのうちユーステノプテロンから進化した肺魚アカンソステガは、ハイネリアから逃れるため、川岸に発達した樹木アーキオプテリスの枯木の間に隠れ、息をひそめていました。
そして機敏に浅瀬に逃げこむために、ヒレが手に進化してきました。
ヒレから手
こうしてわれわれの祖先は、胸ヒレを手に、腹ヒレを足にし、酸素呼吸しながら水辺を徘徊する魚に変身していったのです。
時あたかも地上は、動植物の生存が可能な環境に整備されてきていました。
すなわち、4億年前、空中に放出された酸素が大気の上層部でオゾン層を生成し、地上に降り注ぐ紫外線を吸収するようになったのです。それまで地上は紫外線にさらされ、生物は生存できなかったのです。
これによって、地上に生物が棲める環境が出来上がったことになります。
ついに海から河をへて地上へと、われわれの祖先にとって上陸の準備が整ったのです。