指に分離する前の胎児の手、ウイルスに侵された細胞、ガン細胞など、そのままではからだの成長を妨げるとか、自らの命が危うくなるような細胞は、死んでもらわなければいけません。
そこで我々のからだは、そういう厄介な細胞があらわれたら、自ら死を選ぶようにプログラムされているのです。
実はそういう死に方をコントロールしている司令塔はミトコンドリアにあります。
具体的には細胞処理を担当する酵素が現われて、不適切な細胞の殻の部分を切断し、他の酵素が細胞の核に入り込んでDNAを切断します。
そこにマクロファージがあらわれて、細胞の残骸を食べてしまうのです。
切断したDNAを細胞の外に出さないため、まわりの細胞に迷惑をかけることがありません。
自己犠牲ともいえる静かな死に方です。
これに対し、ネクローシス(壊死)は、もうひとつの細胞の死に方です。
けがや火傷などで細胞が傷つくと、破裂して死んだ細胞から、細胞のなかにあった内容物が放出され、周囲の組織に炎症が波及します。まわりの細胞に多大な迷惑をかける死に方です。