献血できる年齢層の減少
近年高齢化が進み、輸血用血液の需要は高まる一方ですが、逆に献血できる年齢層の人口が減少しており、深刻な不足状況が続いています。
とくに病気や事故で大量出血したときには緊急輸血が必要となり、なかでも赤血球は、原則、血液型が同じ人に限定されるほか、長期間の保存ができないため、ウイルスなどのチェックが十分できないまま輸血される事態も起こらないとは限りません。
そこで、1997年から厚生科学研究として人工血液の開発研究が開始されました。
赤血球には大量のヘモグロビンが包み込まれており、そのヘモグロビンによって、からだ全体に酸素が運ばれます。したがって赤血球以外の手段で酸素を運ぶ方法を開発しなければなりません。
その代表的な手法が、ヘモグロビンを薄い人工膜で包み込む方法です。
様々な種類の人工血液
まずリン脂質のほかに、コレステロールと脂肪酸をアルコールに溶かし、凍結乾燥します。これに水を吸わせて、ヘモグロビン溶液を加え、ミキサーにかけます。
これをフィルターに通して出てきた小さなリポソームの袋が、人工赤血球です。直径は赤血球の30分の1しかないため、脳梗塞などで血管が狭窄していても、なんとか酸素を送り込める利点があります。
そのほか、ヘモグロビン自体を加工して酸素を運搬させる方法や、ヘモグロビンに頼らず、パーフルオロケミカル製剤に酸素を溶かして運搬する方法も検討されています。
さらに、ヘモグロビンに含まれるへムに類似した化合物を合成して酸素を運搬する方法など、さまざまな方法で人工赤血球の開発がおこなわれています。
現在、有効性や安全性、適応等、まだ課題は残っていますが、どんな血液型の人にも使えて、保存にも耐え、ウイルス等による感染症の恐れがない人工赤血球が開発されてきています。
すでに動物実験で効果が確認されており、ヒトでの臨床試験が始まろうとしています。