COVID 19

新型コロナウイルス

(13)変異型ウイルスの恐怖


緊急事態宣言下で市中感染が下火になっている現在、制限を解けば再度感染爆発するのは経験ずみだから、同じ轍を踏む愚行はしないとおもいますが、ウイルス専門家の意見をなおざりにしてきた政府首脳が、今度はどういう作戦で臨むか、国民は固唾を飲んで眺めているところです。

変異ウイルスの爆発的増殖

ところで今、感染症対策専門家の頭を悩ませているのは、変異型新型コロナウイルス(以後、変異ウイルスと省略)への対応という問題です。

ご承知のように、2020年後半、イギリス国内に出現した変異ウイルスは爆発的に急増し、わずか2か月間で従来型ウイルスを駆逐し、英国内で80%を占めるほどになったそうです。現在、欧米ではこのパワーアップしたウイルスへの対応に頭を悩ませているのです。

変異ウイルスの国内侵入

我が国でも水際対策の不備から、そのウイルスが2020年12月に国内に入り、3か月後の現在、分かっているだけで感染者は100人以上、関東中心に10県以上に広がっています。

既にこの変異ウイルスは従来の新型コロナよりも感染力が高く(最大70%増加)、死亡率も高い(30~40%増加)ことが知られています。それにもかかわらず、変異ウイルスが一体どのくらい我が国に入っているかは、よく分かっていないのです。

以前からウイルス専門家が警鐘を鳴らしていたことですが、1時間でウイルスのゲノム解析が判明する海外に較べ、我が国では検査機関も少なく、甚だ後れ(1週間を要する)をとっており、コロナ感染者のわずか10%しかゲノム解析ができていないという現状なのです。

ゲノム解析の遅れ

これでは変異型ウイルスがいったいどのくらい広がっているのか分からず、対策の立てようがありません。政府関係者の力点を置く場所が間違っているとしか思えないのです。

民間検査機関や大学研究室を利用すれば、解決のめどがたつと指摘されながら、手をこまねいている実態に、苛立ちを覚えずにいられません。

 

さらに最近イギリス型に加え、南アフリカやブラジルで確認された変異ウイルスも国内に入ってきたことが確認されており、専門家のあいだに危機感が高まっています。これらはイギリス型と違い、現行のワクチンでは効果がない可能性もあると指摘されているのです。

ご承知のとおり、わが国の入国隔離政策は海外の隔離政策に比し、極めてずさんだと、そしりを受けています。

政府には相当の危機感をもって、空港などでの水際対策をとってほしいと願うばかりです。

ワクチンの開始

ところで、待ちに待った新型コロナワクチンが我が国にも到着しました。さしあたり、医療関係者から接種が開始される予定です。アナフィラキシーなど、大きな副反応が出ないことを祈るばかりです。

ファイザーとモデルナのワクチンは、ポリエチレングリコールに新型コロナのスパイク蛋白のmRNAを組み込んでおり、ワクチンを接種すると、体内の細胞がそのmRNAから新型コロナのスパイクタンパク質を作り出します。これに対して免疫系がスパイクタンパクに対する抗体を産生するというメカニズムになっています。

また、アストラゼネカのワクチンはチンパンジー由来の弱毒化したアデノウイルスに,新型コロナのスパイク蛋白の遺伝子を組み込んでいます。このアデノウイルスベクター(運び手)はヒトに感染すると、からだの細胞内に入り1度だけ蛋白質をつくりますが、それ以上は増えない仕組みになっています。その過程がウイルス感染によく似ているため、同じような免疫応答がおこり新型コロナに対抗できるものと期待されるのです。

ワクチンの効かないウイルス

従来mRNAを使用したワクチンは、イギリス型変異ウイルスが出現しても変異部分の遺伝子配列が分かれば、そこだけを入れ代えればすむので、ワクチンは数カ月で簡単に作り変えられると説明されていました。

ところが、南アフリカやブラジルで確認された変異ウイルスは、イギリス型と違い、既存の免疫システムを回避する可能性が指摘されたため、新たなワクチン開発が必要になるのではとの懸念が生じているのです。

つまり、変異ウイルスがさらに変異し続けた結果、今のワクチンでは防御できないウイルスに進化した可能性が危惧されるのです。

 

変異ウイルスの国内流入を総出で防ぐのはもちろんですが、すでに国内に潜入している変異ウイルスを抑え込むため、短時間でゲノム解析できるシステムを一刻もはやく構築してほしいと願っています。