からだのなかに細菌などの病原体が入ってくると、すぐさまこれを自分のなかに取り込み、「こんなものをつかまえたよ」と、 “攻撃役”のリンパ節まで連れていく細胞があります。
樹状細胞といわれるもので、外敵に対する見張り役です。
こうして樹状細胞が病原体をリンパ節へ連れていくと、リンパ節(リンパ球の集団)では、これをTリンパ球が一斉に攻撃する仕組みになっています。
しかし今までは、なぜ樹状細胞が道に迷わず、リンパ管を伝ってリンパ節までたどり着けるのかは謎でした。
このたび、大阪大免疫学フロンティア研究センターの熊ノ郷淳教授らの研究グループは、この樹状細胞の“道案内”をするタンパク質の働きを解明することに成功しました。
そのタンパク質の名はセマフォリン。
リンパ管から分泌されるタンパク質で、樹状細胞は「セマフォリン」と結びつくと、細長く形を変え、リンパ管の細胞のすき間をすり抜けて中に入り込めることがわかりました。
さらに熊ノ郷教授らは、「セマフォリン」を認識できないようにしたマウスの樹状細胞はリンパ節に移動できないことを、顕微鏡下に確認しました。
関節リウマチやアトピー性皮膚炎など免疫異常で起きる病気は、樹状細胞から情報を受けたTリンパ球が異常に活性化することが原因といわれています。
したがって
「セマフォリンの働きを抑えればこれら免疫異常を抑えられるのではないか。また、逆にセマフォリンの働きを強めれば、免疫反応も強められ、ワクチンの効果を挙げられるのではないか。」
と熊ノ郷教授は語っています。
さらに、ガン細胞が転移する際、メインルートであるリンパ管内で、セマフォリンと何らかの関わりをもっていることが予想されます。
将来、研究が進めば、転移を防ぐ治療法が開発される可能性も十分あると期待されます。