IMMUNE

免疫のはなし

花粉症

花粉
アレルギーは、外から異物が入り込もうとするのに対し過激に拒絶反応をおこした状態です。これではからだを守るどころか、かえって有害となります。

この過剰反応をおこす犯人はIgEという免疫を司るタンパク質です。

たとえば花粉がからだに入ろうとすると、免疫細胞(リンパ球)はこれを有害と判断して多数のIgEを増産します。

鼻の粘膜には炎症性物質を多量に含んだ肥満細胞があって、これに多数のIgEがくっつくと肥満細胞は風船のように膨らみ、爆発寸前になります。いわばIgEは起爆装置です。

さらに花粉がやってくると、ついに肥満細胞は破裂し、内からヒスタミンやロイコトルエンなどの化学物質が大量に放出されます。

鼻づまりで花粉の侵入を防ぐ、という仕組み

ヒスタミンは目や鼻にかゆみをおこし、涙や鼻水で花粉を洗い流そうとし、ロイコトリエンは鼻づまりをおこして花粉の侵入を防ぎます。

花粉症の治療は通常、飛散開始日より1~2週間前から始めるのがよいといわれています。

鼻アレルギーに対しては、軽症例では抗ヒスタミン剤が中心になりますが、症状や重症度によって、遊離抑制薬やステロイドの点鼻薬がつかわれます。ステロイドの飲み薬は重症の場合以外は使われません。

また重症の場合、鼻の粘膜をレーザーで焼く手術療法もありますが、効果の持続期間にはかなりの個人差があるようです。

また最近、花粉エキスを注射したり数分間舌下に含んで、体質を変えようとする減感作療法も試みられています。

わが国の花粉症は大半がスギ花粉症で、現在患者数は3,800万人にものぼるといわれ、国民病の様相を呈してきました。その原因は単にスギ花粉の飛散量が増加しているだけではないようです。

アレルギー疾患が増える理由

つまり以前から、「清潔すぎる環境で生活しているところにはアレルギー疾患が増える」という衛生仮説がありましたが、これを支持するように最近、ドイツの研究で、乳幼児期に家畜小屋に多いエンドトキシン(細菌が死ぬと大量に出る物質)に触れると、花粉症や喘息が発生しにくいという報告がされたのです。

たしかに除菌、除湿の効いたクリーンで快適な部屋で子育てした場合には、アレルギーの子供が増える傾向がみられるようです。

乳幼児を野外に出して外気に十分あてて育児する重要性を示唆するものとおもわれます。

かつて我々の祖先はダニや寄生虫などの外敵から身を守るため、IgEを造りだしたのです。

ところが、現代の超清潔社会に住むようになって、われわれはかえってIgEによるアレルギーに悩むようになっているのです。