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核医学のはなし

放射線障害

原子
放射線とはウラン、ラドン、プルトニウムなどの放射性物質から放出された波長の短い高エネルギーの電磁波(X線、ガンマ線)や高速の粒子(アルファ粒子、ベータ粒子、中性子)をいいます。

原子は電気的にプラスの陽子と中性の中性子からなる原子核のまわりをマイナスの電子が回っています。

X線とはモリブデンなどの標的に加速した電子がぶつかるときに、原子から放出される電磁波をいいます。

中性子の数が多い原子では中性子が陽子に変わることがあり、そのとき原子核から放出されるマイナスの電子の流れをベータ線と呼び、ベータ線と一緒に原子核から出てくる電磁波をガンマ線と呼びます。

つまり原子を形作っているもののうち、電子が飛ぶのをベータ線、中性子が飛ぶのを中性子線、陽子がとぶのを陽子線と呼びます。またプルトニウムのなかのヘリウムの原子核から出るのがアルファ線です。

放射線照射の人体への影響

放射線障害は放射線照射を受けた部位を中心に現れますが、とくに細胞の増殖がはやい腸や骨髄などには、障害が出やすくなります。精子や卵子も同様に影響を受けやすくなっています。

したがって放射線照射にあたってはこれらの部位を極力避けるようにしますが、病変によっては避けることのできない場合があります。

たとえば骨髄や脾臓、リンパ節が放射線を浴びると、その日のうちに食欲不振、吐き気、嘔吐が現れます。

その後しばらくは症状が消えますが、骨髄や脾臓の働きが抑えられるため、赤血球や白血球、血小板が絶対的に不足する事態になります。

白血球が欠乏すると感染症にかかりやすく、血小板が不足すると出血が止まらなくなります。

また貧血が進行すると倦怠感が強く生活に支障を来たすようになります。

また放射線が消化管を照射すると、吐き気や嘔吐が強くなり、胃腸の細胞が障害され粘膜がただれた状態になるため、血性の下痢となり、感染にかかりやすくなります。

さらに肺への放射線照射は放射線肺炎を引き起こすことがあり、大量照射では、肺に線維化が起こり、呼吸困難をおこすようになります。

また、放射線照射後10年以上経過すると、遺伝子の損傷により白血病やガンが発生しやすくなります。

また免疫の異常、不妊などのほかに、白内障もおこすようになります。さらには、子孫に遺伝的な影響を及ぼすことも危惧されています。