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医の倫理

不妊治療

妊婦
現在、我が国では夫婦の10%は不妊といわれています。しかも40歳を超えて慌てて不妊治療を始めるひとは、不妊治療者全体の30%を占めており、世界的にも際立っています。

これは40歳でも十分妊娠できると考えている日本人がいかに多いかを物語っていますし、40歳を過ぎると妊娠できる可能性はわずかしかないことを、あまりに知らなさすぎるともいえます。

ただし、不妊の原因は女性にばかりあるわけではありません。男性に原因がある場合が40%、女性に原因がある場合が40%、両者に原因がある場合が15%、原因不明が5%といわれています。

不妊治療は通常、人工授精がもっとも一般的です。

人工授精とは男性に精液を提供してもらい、女性の子宮内に注入することをいいます。この治療は、精子の数が少ない場合や、運動率が低い場合が最も適応となります。

このため、人為的に精液を遠心分離して活性の高い精子を取り出し、子宮内に注入します。

一方、女性の子宮頚管粘液の量が少なく、精子がうまく子宮の中に入っていけない場合や、女性のからだにパートナーの精子に対する抗体ができてしまう場合も人工授精の適応になります。

人工授精、成否のカギ

人工授精の成否のカギは、どれほど正確に排卵のタイミングにあわせて精子を注入できるかにかかっています。

通常、6回までトライしてうまくいかなければ、体外受精に切り替えることが多いようです。

体外受精とは体内では受精が難しいと判断された場合に、体の外で受精を行う方法で、排卵誘発剤を用いたり、卵巣から外科的に取り出した卵子を、シャーレの中で精子と接触させて受精させたのち、受精卵を子宮内に戻して妊娠を図る手法です。

試験管内受精とも呼ばれ、我が国では年間21万件にも達しています。

具体的には人工授精が不成功であるほかに、精巣中には精子がいても精液中に出てこない場合、卵管が閉塞しているため卵子が通過できない場合、子宮内膜症のため妊娠できない場合などに適用されます。

精子に問題がある場合は顕微鏡でみながら、数少ない精子をガラス管を用いて直接卵子に注入する方法がとられます。細かい作業を要し、顕微受精と呼んでいます。

女性の社会進出が目立つ昨今、結婚時期が遅くなりがちで、妊娠年齢もさらに遅くなってきました。

ところが、女性は32歳を過ぎると卵子の老化が目立ち始め、不妊治療をしても子供が生まれる確率は35歳で17%ですが、40歳になると8%、45歳ではじつに0.5%しかないのです。

医学が発達しても、老化は止めることができません。30歳までに子供をもうけることを勧める理由はそこにあります。