出生前診断とは胎児に先天異常や遺伝性の病気がないかどうかを出生前に明らかにし、妊娠を継続するか否か、胎児期に治療を行う必要がないか、分娩方法をどうするかなどを検討するものです。
とくに自分が染色体異常や先天異常の障害をもっているとか、すでに障害のある子を出産したとか、あるいは高齢妊娠(染色体異常児出産の頻度が高い)のかたたちが検査を希望されています。出生前診断は強制されるものではなく、基本的に本人の自由意志でおこなわれます。
現在、出生前診断には、以下のような方法があります。
- エコー(超音波)検査は、通常の妊婦検診で実施されています。それにより、胎児の染色体異常の可能性もある程度(数%から30%)分かるといわれています。
- 母体の血液検査
トリプルマーカーテストと呼ばれ、大雑把に染色体異常をテェックするのが目的です。ただ確定診断できる検査ではなく、陽性の場合は羊水検査が必要になります。
なお最近、母体からの採血でダウン症など3つの染色体異常の診断を行うことが可能となってきており,近い将来羊水検査や絨毛検査にとってかわる可能性があります。 - 羊水穿刺
羊水中の胎児細胞を調べ、染色体異常・遺伝疾患などを診断しますが、すべての胎児異常が分かるわけではありません。 - 絨毛採取、臍帯血採取は手技が難しく、流産の危険もあるため、頻繁にはおこなわれていません。
出生前診断で胎児の異常が判明した場合、経済的理由や家族の精神的負担などから、実際には多くの方が人工妊娠中絶をうけているようです。
これには賛否両論ありますが、いずれにしても中絶手術は妊娠22週が限界です。
残念ながら現在の出生前診断では、妊娠22週までに必ず異常を診断できることは限らないのです。
したがって22週以後に異常が判明した場合、告知は両親にとって極めて苦痛となりますが、出産後どう対処したらよいか、心の準備ができると考えなければならないでしょう。
また、なかには出生前診断で胎児治療を急がないといけないケースがあり、こういう場合には非常に有用といえます。
一方、1990年以降、体外受精が頻繁におこなわれるようになり、受精卵の状態で胎児の異常を診断する技術が発達してきました。
出生前診断の一部ではありますが、対象が胎児ではなく受精卵であるため、着床前診断と呼んで区別しています。
この場合も、検査で異常がなければ子宮に戻し、異常があればその受精卵を破棄するという、人権に関わる問題をかかえています。
ただ、染色体に異常をもつ受精卵の97%以上は妊娠しても流産、死産してしまうといわれているため、不妊治療をしているかたにとって、着床前診断は大きな安心を得るのに役立っています。