このたび、クローン技術が大きな進展を成し遂げたというニュースです。
アメリカ、オレゴン健康科学大学の研究チームが、世界で初めてヒトのクローン胚からES細胞を作り出すことに成功したというのです。
今まで動物実験では成功していましたが、ヒトの細胞では初めての快挙というわけです。
研究チームは、健康な女性の卵子112個から核を取り除き、かわりに別の人の皮膚細胞の核を入れ込んでクローン胚をつくりました。
これを培養したところ、そのうち21個が、今まで困難だった胚盤胞と呼ばれる段階まで成長させることに成功しました。
さらにその組織の一部を培養すると、6個がES細胞(胚性幹細胞)になったそうです。ES細胞とは、からだのどの細胞にでもなれる能力をもった万能細胞です。
移植医療の切り札は夢のシナリオになるのか
事実、このES細胞(万能細胞)を心臓の細胞にまで成長させることに成功したというのです。
ということは、心臓の悪いひとが自分の皮膚の細胞をつかって健康な心臓の細胞をつくり、自分の心臓に移植して健康を取り戻すことができるという夢のシナリオを描くことができるのです。
2006年以来、卵子を使わず、ヒトの体細胞だけでiPS細胞(人工多能性幹細胞)をつくる研究が脚光を浴び続けていますが、それに劣らず、有力な移植医療の切り札になるものと期待されます。
ただ、クローン技術というものは、使い方を誤ると、とんでもない結果を招きかねません。
つまり、作成した「胚盤胞」を女性の子宮に戻すと、クローン人間の生まれる可能性があるのです。このため我が国では、ヒトES細胞の作製は難病治療などの研究目的のみに許可されています。