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再生医療

脂肪幹細胞移植で乳房をもとに戻せるか?

乳房
脂肪幹細胞皮下脂肪のなかにあって容易に取り出すことができ、傷ついた組織を修復する機能をもつ幹細胞です。内臓脂肪にはありません。

ただ脂肪幹細胞は、幹細胞ではあるものの万能性はなく、脂肪のほかには骨・軟骨・筋肉・肝臓・血管への分化が確認されているだけです。ですからこれらの臓器の修復には大いに期待が持たれているのです。

とくに乳房は、容積の9割が脂肪組織からなっているため、癌で乳房切除した患者さんの乳房再建・漏斗胸の治療・乳房を含む皮膚の治療など、脂肪幹細胞移植のもっとも適した部位といえます。

乳房再建に期待される脂肪肝細胞

従来、豊胸に対しては、シリコンジェルや生理食塩水を内包する人工バッグを胸に挿入する方法やヒアルロン酸を注入する方法、脂肪を移植する方法がされてきました。

このうちシリコンを用いる方法では、人工物を入れているという違和感や定期的な検査や交換などという煩わしさがあります。

また、ヒアルロン酸は数ヶ月でからだに吸収されるため、頻回に繰り返す必要があります。さらに脂肪移植法では、脂肪細胞の寿命が3年ほどで尽きるため、時間とともに小さくなっていくこと、また石灰化が生じる欠点も指摘されるようになりました。

そこで近年、とくに乳癌術後の乳房再建に対し、脂肪幹細胞移植の臨床研究が順調に進んでいます。具体的には、皮下脂肪を採取し、脂肪幹細胞を取り出して脂肪と混ぜて注入すると、脂肪が生着して、損傷で生じた変形を元に戻すというものです。

脂肪幹細胞は本来からだがもっているもので、iPS細胞のように人工的に作られるものでないため、幹細胞の状態で採取ができ、ガン化の心配もなさそうです。

このためごく近い将来、臨床応用が許可されるものと期待されています。