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再生医療

皮下脂肪による再生医療

再生

幹細胞

再生医療の切り札ともいうべき幹細胞には2つの特徴があります。

すなわち、発育するにしたがって、肝臓・膵臓・心臓・骨・血管・脂肪などいろいろな細胞に姿を変えられること、さらに、いくらでも自己コピーをとることができるという特質をもっています。

トカゲやイモリが手足・尻尾をいくらでも再生させることができるのはこの幹細胞のおかげです。

しかし人では幹細胞の数が少ないため、失った手足を再生することはできないのです。

通常、幹細胞とは骨髄などに存在している体性幹細胞を指しますが、細胞数が少なく、1個1個の細胞が持つ再生能力には限界があります。

これに対し、再生医療を目的に人為的につくられたのがES細胞(胚性幹細胞)iPS細胞(人工多能性幹細胞)です。

骨髄細胞移植による血管新生療法

この数年、我が国をはじめ世界中で著しい進歩をみせているのが、骨髄細胞移植による血管新生療法です。

これは骨髄に含まれる未熟な幹細胞が血管内皮細胞などへ分化し、血液の循環が悪くなった部位に到達すると増殖しながら新しい血管を作り、再び血液が循環し始めるのを利用した治療法です。

具体的には、骨盤の一部である腸骨から注射器で採取した骨髄液から骨髄単核球を分離し、これを本人の下肢数十ヵ所に筋肉注射します。

この治療により、閉塞性動脈硬化症やバージャー病など下肢の血行が悪い人々に、劇的な改善がみられるようになりました。

さらに近年では、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳梗塞などにも効果がみられ、その適応範囲が広がっています。

ところで、この骨髄の幹細胞に比べると、皮下脂肪には多量(数百倍)の幹細胞が含まれているのです。

当然ながら、皮下脂肪の幹細胞も血管内皮細胞に分化して新しい血管を作るし、他の臓器にも分化していきます。

この事実に注目し、2007年1月には、国立がんセンターと国立国際医療センターの研究チームが皮下脂肪の幹細胞から肝臓細胞を作製することに成功しました。

研究チームは、腹部手術を受けた患者さんから採取した皮下脂肪5グラムより幹細胞を分離し、発育を促進する蛋白質を加え40日間培養したところ、ほぼすべてが肝細胞に変化したそうです。

この研究が軌道に乗れば、全国に400万人いる肝臓病患者さんの福音になることは間違いありません。

また、2009年4月、信州大学医学部では血行の悪い患者さんの皮下脂肪を採取して得た幹細胞を、血管の再生に使う臨床試験を厚生労働省に申請しました。

骨髄穿刺に比べ患者さんへの負担が少なく、治療効果も高いのではと期待が寄せられています。