地球上の生物は酸素を利用して、細胞内のミトコンドリアでATPを産生する。
これが生命維持の基本メカニズムであることは周知の事実です。
ところがギリシャのクレタ島に近い地中海の海底から、酸素なしで生きる動物が見つかったというのです。
海水との接触がなく酸素が全く含まれない海底の堆積物中に、体を硬い殻で包んだクラゲのごとき小動物が3種類も生息していたのです。
それぞれ1ミリ以下と小型ですが、そのうち2種類は卵子を持っており、長らくこの環境で生息してきたものと考えられました。
イタリアとデンマークの研究チームはこれらを無酸素の状態で孵化させることに成功したそうです。
今まで生物界では、酸素がないところには単細胞生物しか生息できないと信じられていましたが、今回の発見によりそれが否定されたのです。
すなわち、これらの生物にはミトコンドリアが存在せず、その代わりにハイドロジェノソーム(ヒドロゲノソーム)と呼ばれる細胞器官が備わっていました。
もともとハイドロジェノソームはミトコンドリアの進化したものと考えられており、酸素がなくてもリンゴ酸もしくはピルビン酸からカルボキシル基を除去し、水素および二酸化炭素を産生するとともに ATP を合成し、エネルギーを産生できるといわれています。
今後、酸素のない地球外生命の探索に、なんらかの寄与をするのではないかと期待されています。